研究課題/領域番号 |
19K17865
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
内山 由理 横浜市立大学, 医学研究科, 特任助教 (50829794)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 先天性造血障害 / 汎血球減少症 / 全エクソーム解析 |
研究実績の概要 |
(1)遺伝子A・(2)遺伝子Bにおける下流遺伝子の発現・リン酸化異常の検証のため、in vitroでのWestern Blot解析やリン酸化特異的抗体によるイムノブロッティング法を用いて変異タンパク質の機能を評価すること、加えて、 (3)原因不明の血小板減少症を呈する先天性止血・凝固異常症42家系に対し全エクソーム解析を用いて新規原因遺伝子の同定を試みることを目的としている。 1)遺伝子A:遺伝子Aの機能評価は、当初患者及び健常人由来株化リンパ芽球から抽出したRNA、タンパク質を用いて、RT-PCR及びWestern Blot解析にて遺伝子AのmRNA及びタンパク質発現を評価する予定であった。まず、患者由来の株化リンパ芽球細胞の変異含有状況を調べる目的で、株化リンパ芽球からDNAを抽出し、サンガー法を用いた変異解析を行った。末梢血単核球由来のDNAでは、変異含有率が20%程度確認されているが、本解析では変異を確認することができなかった。患者由来の株化リンパ芽球細胞の変異含有率が非常に低い可能性を考え、患者由来の株化リンパ芽球に対し、1細胞ごとに単離・培養を480細胞行った。これら全てに対し、サンガー法を用いて変異含有細胞の有無を検証したが、変異含有細胞を確認することはできなかった。このことは、本バリアントの病原性が高く、生存が困難なため死滅した可能性を強く示唆した。このため、他系統の解析を用いた遺伝子Aの機能評価を検討している。 2)遺伝子B:患者由来の株化リンパ芽球を用いたRNAシークエンスによる下流遺伝子の発現解析を準備、開始している。 3)原因不明の先天性止血・凝固異常症42家系の遺伝学的解析:発端者の全エクソーム解析を42家系全例に対して終了した。現在バリアント評価を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)遺伝子A:患者由来の株化リンパ芽球細胞における変異含有率が著しく低く、その後の解析が困難であることは当初予期しえないことであった。 一方で、この結果は本バリアントの病原性の強さを示すものでもあり、胎生期に生じた体細胞モザイク変異では生存可能であるが、ヘテロ接合性変異は胎生致死の可能性が予測された。骨髄細胞を用いた検証など、他系統での解析を予定している。 2)遺伝子B:予定通りRNAシークエンスの解析を行っている。 3)42家系の原因不明の止血・凝固異常症家系の全エクソーム解析:予定通り全42家系の発端者のエクソーム解析を終了した。現在バリアント評価を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 遺伝子Aでは、患者由来の株化リンパ芽球細胞における変異含有率が著しく低く、その後の解析が困難であることは当初予期しえないことであった。今後骨髄細胞など他系統の細胞を用いた解析を予定している。 2) 遺伝子Bは、RNAシークエンスの解析をすすめる。 3) 42家系の原因不明の止血・凝固異常症家系の全エクソーム解析の評価を終了し、機能評価とともに、解析手法の評価も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子Aの機能解析を予定していたが、患者由来の株化リンパ芽球における変異含有率が著しく低く、その後の解析が一時中断した。 現在は別組織での変異含有率の検証を検討している。検証手法は既に末梢血単核球由来のDNAで確立しており、本手法を用いて更なる病態評価をすすめる。 遺伝子Bにおいて、RNAシークエンスを2019年度に行う予定であった。RNAシークエンスは多数検体で同時に解析を行うことが、解析結果の精度上昇につながることが知られている。2020年度に多検体によるRNAシークエンスを行う予定があったため、これらと解析タイミングをあわせることに変更した。その他の計画は予定通り進行している。
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