進行期造血器腫瘍では、強力な抗腫瘍免疫を有すハプロアイデンティカルドナーからのHLA不適合移植(ハプロ移植)を行っても再発率が依然高いという問題がある。そこで①ハプロ移植後の地固め療法としてドナーリンパ球輸注(DLI)を行う研究と、②ハプロ移植後再発において腫瘍細胞のHLAハプロタイプの同定を行ってその後の治療方針を決定する研究とを計画した。しかし当科でのハプロ移植は移植前処置としての保険適用を当初有しないアレムツズマブを使用していたため特定臨床研究法に対応することが必要となり、その対応に時間を要した。そのためハプロ移植の施行患者数が予定よりも少なくなった。 ①については、2020年末にアレムツズマブは適用拡大となって移植前処置に通常診療として使用できるようになったためプロトコールを調整し、2021年3月に自施設倫理委員会の承認も得た(UMIN000043766)。症例登録を開始し、DLIも実施している。ただし非寛解期移植患者は早期の血液学的再発が多く、地固め療法としてDLIを行えないことも多いため、分子生物学的ならびに細胞遺伝学的非寛解期移植患者も対象に含むプロトコールを変更し、現在も臨床研究を継続している。 ②の研究は2019年の段階で自施設倫理委員会の承認を得て開始しているが(UMIN000029097)、前述のハプロ移植施行患者の減少で登録患者数は限定的となっている。ただしこれまでのところHLA lossが確認された再発患者は認められておらず、再発後の治療選択を検討するための有効な手段となっている。 本年度は血液学的寛解患者にまで対象を広げたハプロ移植後DLIの研究を進めるために、改めて寛解期ハプロ移植についての学会発表を行ったほか、アレムツズマブの有効性の検討を再生不良性貧血まで広げた学会発表も行った。また移植後DLIを含めた移植後治療についての総説をまとめた。
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