研究課題/領域番号 |
19K17872
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
原 隆二郎 東海大学, 医学部, 助教 (90750026)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 特発性肺炎症候群 / アンジオテンシノゲン |
研究実績の概要 |
【目的】本研究の目的は、同種造血幹細胞移植に伴う免疫学的合併症である特発性肺炎症候群(Idiopathic pneumonia syndrome =IPS)の発症メカニズムを解明し、その発症予測や治療法の確立につながる知見を得る事である。我々はIPS患者の一塩基多型(SNP)解析にて、アンジオテンシノゲン遺伝子のSNPがIPSの発症と相関することを見出した。そして、そのSNPを有する症例では血中のアンジオテンシノゲン濃度が低値であった。レニン・アンジオテンシン系(renin-angiotensin system=RAS)とIPSの関わりを明らかにするために本研究を行った。 【方法】C57BL6マウス(H2b)に、B10.BRマウス(H2k)の骨髄細胞及び脾臓T細胞を移植するGVHDモデルを確立した。移植2週間後の肺機能や免疫細胞浸潤と、そしてRAS因子のRNA、蛋白発現を解析した。同様にアンジオテンシノゲンの血中濃度が低下するノックアウトマウスに移植するGVHDモデルで肺障害を評価した。 【結果】野生型マウスへの移植後肺にCD3陽性T細胞の浸潤を認めた。アンジオテンシノゲンの血中濃度や肝臓、腸組織での発現はコントロールと同等もしくは増加していたが、肺での発現はコントロールよりも低下していた。アンジオテンシノゲンの血中濃度が低下するノックアウトマウスへの移植後2週間の時点で、組織学的な肺障害の変化は明らかでなかったが、肺機能検査や炎症性サイトカインの発現に関してノックアウトマウスで増悪していた。ノックアウトマウスへの移植後の生存期間は野生型よりも短かった。 【結論】本結果はヒトでの結果と同様であり、RASがIPSの病態に関与している事が確認できた。RAS因子のSNPや発現量によってIPS発症を予測できる可能性があり、今後このRASがIPSの治療標的となりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの移植モデルが確立し、仮説と一致する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はIPSと病態が類似している特発性肺線維症(Idiopathic pulmonary fibrosis= IPF)でHigh mobility group box 1(HMGB1)とその受容体であるReceptor for advanced glycation end-products(RAGE)の経路が肺線維化を増悪させていることに着目し、我々のGVHDモデルでも同様の機序が関連しているのか否かを明らかにする。また、RASと関連して肺障害に関わる因子として、Plasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)との関わりについても検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延及び施設内での診療体制の変更に伴い、年度末の研究計画に若干の延期が生じた。 延期した分は本年度購入予定であった研究試薬(Fast SYBR Green Master Mix 1mL)の購入費用に利用する。
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