研究課題
【目的】本研究の目的は、同種造血幹細胞移植に伴う免疫学的合併症である特発性肺炎症候群(Idiopathic pneumonia syndrome =IPS)の発症メカニズムを解明し、その発症予測や治療法の確立につながる知見を得る事である。我々はIPS患者の一塩基多型(SNP)解析にて、アンジオテンシノゲン遺伝子のSNPがIPSの発症と相関することを見出した。そして、そのSNPを有する症例では血中のアンジオテンシノゲン濃度が低値であった。レニン・アンジオテンシン系(renin- angiotensin system=RAS)とIPSの関わりを明らかにするために本研究を行った。【方法】C57BL6マウス(H2b)に、B10.BRマウス(H2k)の骨髄細胞及び脾臓T細胞を移植するGVHDモデルを確立した。移植2週間後の肺機能や免疫細胞浸潤と、そしてRAS因子のRNA、蛋白発現を解析した。同様にアンジオテンシノゲンの血中濃度が低下するノックアウトマウスに移植するGVHDモデルで肺障害を評価した。【結果】野生型マウスへの移植後肺にCD3陽性T細胞の浸潤を認めた。肺でのアンジオテンシノゲンの発現はコントロールよりも低下していた。アンジオテンシノゲンの血中濃度が低下するノックアウトマウスへの移植後2週間の時点で、ノックアウトマウスで肺機能検査や炎症性サイトカインの発現が増悪しており、ノックアウトマウスで生存率が低下していた。野生型および肝臓でのアンジオテンシノゲンノックアウトマウスいずれも肺胞マクロファージでのアンジオテンシノゲンの産生が移植後で亢進していた。より簡便な肺障害モデルであるブレオマイシン肺障害モデルでも同様の結果であった。【結論】RASがIPSの病態に関与している事、そして血中のRAS発現と肺局所でのRAS発現が相関していない事が確認できた。
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Clinical lymphoma myeloma & leukemia
巻: 21 (4) ページ: e321-e327
10.1016/j.clml.2020.10.004