研究課題
慢性ストレスの代表である老化過程において、ストレス反応蛋白であるp38MAPKがどのように造血幹細胞に機能するかを解析した。老化のモデルとして(1)生理的老化マウス(2)早老症モデルであるAtmノックアウトマウスを用いた。p38αコンディショナルノックアウトマウスを若年齢でp38αノックアウトを誘導し1年齢で解析した結果は、若年齢p38αノックアウトマウスの解析と同様に移植後の再構築能は低下しており、造血幹細胞機能は低下していた。一方で、1年齢でp38αノックアウトを誘導し2年齢で解析した結果は、p38αノックアウトにより移植後の造血系再構築能の亢進を認め、造血幹細胞機能亢進を認めた。これらの結果は、老化の過程は一様ではなく、幼少→若年→中年→壮年のそれぞれの過程でシグナルが複雑に制御されていることが示唆された。早老症モデルであるAtmとp38αのダブルノックアウトマウスの解析では、Atm単独ノックアウト造血幹細胞は既報の通り機能低下を認めた。一方で、既報ではAtmノックアウトにおける造血幹細胞機能低下はp38MAPK阻害薬で回復したが、我々のダブルノックアウトマウスでは造血幹細胞機能回復は回復せず、より顕著に造血幹細胞機能が低下した。この結果は、p38MAPKの薬理学的阻害と遺伝学的欠損における生物学的機能の乖離があることを示唆した。また生理学的老化においてはp38αの欠損は造血幹細胞機能回復に寄与したが、早老症モデルであるAtmノックアウトにおいては、その知見は得られなかった。即ち、生理学的老化と早老症モデルにも、乖離があることが示唆された。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Journal of Biological Chemistry
巻: 296 ページ: 100563~100563
10.1016/j.jbc.2021.100563