研究課題/領域番号 |
19K17878
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
三島 優一 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (90713876)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ADAMTS13 / 肝星細胞 |
研究実績の概要 |
本研究はVWFを切断することで過剰な血小板凝集を抑制するADAMTS13の遺伝子発現調節機構を明らかにすることを目的としている。最初にADAMTS13を発現している可能性がある細胞を探した。ADAMTS13は主に肝臓の肝星細胞に発現しており、肝星細胞株のLx2、TWNT1や文献で発現が報告されているヒト肝がん細胞株(HepG2)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)など、そして、コントロールとして発現が報告されていない細胞株からRNAを抽出し、mRNA量をリアルタイムPCRで比較した。しかしながら、Lx2、TWNT1、HepG2などはコントロール細胞と比較しても高発現していなかった。また、ADAMTS13は細胞外に分泌されるタンパク質なので、培養上清でタンパク質が存在するかどうかを調べたが、ADAMTS13の分泌を確認できなかった。肝臓内の肝星細胞には静止型と活性型の状態があり、一般的に肝臓が損傷を負うと肝星細胞は静止型から活性型に移行し、肝星細胞はコラーゲンを分泌し肝硬変の原因となる。ADAMTS13は肝臓の状態が悪化すると血中のADAMTS13量が減少するという報告があることから、ADAMTS13の発現には肝星細胞の状態が重要であることが考えられる。本研究で使用しているLx2は活性型に近い性質を示すことが報告されているので、静止状態の肝星細胞に貯蔵されているビタミンAや特異的に発現しているタンパク質が関係している可能性がある。そこで、Lx2の培養液にビタミンAを添加、あるいは、細胞からクローニングし発現ベクターに導入したサイトグロビンを強制発現させたが、ADAMTS13のmRNAでの発現上昇はみられなかった。培養細胞でADAMTS13の発現する状態を検討する必要性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ADAMTS13の発現があると報告されている細胞株はADAMTS13の発現が報告されていない細胞株と比較してもmRNAレベルで違いはなく、今回、実験で使用した細胞株や初代培養細胞はADAMTS13の発現が低い可能性が示唆された。そのことにより初年度はADAMTS13が発現している細胞の探索や細胞株の培養条件の検討に時間を費やしたことや肝星細胞の静止型と活性型に特異的に発現するタンパク質の遺伝子のクローニングをしたことなどにより予定していた実験を行うことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ADAMTS13は肝臓を構成する肝細胞、類洞内皮細胞、クッパー細胞、肝星細胞の中でも肝星細胞のみで発現している。肝臓内における肝星細胞の存在比は約5%と報告されており、現在、肝星細胞株を単独で培養しているが、今後は他の細胞との共培養を検討する。また、より生体に近い状態でのADAMTS13の発現を調べるため、初代培養の肝星細胞でもADAMTS13の発現を検討する。肝星細胞は損傷を受けると活性型に移行するが、これまでこの状態から静止型に回復させることを目標とした研究が行われている。Lx2はDexamethasone+Insulin+Isobutylmethylxanthine(MDI)を加えると状態が変化し、静止型の肝星細胞で特異的に存在するperoxisome proliferator-activated receptorγが再び発現する(Exp Mol Pathol. 91, 664-672. 2011)。今後はMDIや他の活性型から静止型の状態に近づける試薬を用いてADAMTS13の発現状態の変化を調べる予定である。
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