研究課題/領域番号 |
19K17880
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
安部 沙織 筑波大学, 医学医療系, 助教 (00830093)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / T細胞 |
研究実績の概要 |
シェーグレン症候群(SS:Sjogren’s syndrome)において, M3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R:M3 Muscarinic acetylcholine receptor)反応性Th17細胞に着目し、以下の解析を行った。 1)SSの末梢血中M3R反応性IL-17産生細胞の陽性率は50%(5/10例)であった。2)1)の陽性例において、T細胞エピトープはM3Rペプチド(AA76-95)であった。3)M3R反応性Th17細胞のサイトカイン産生能を解析し、IL-17産生細胞のみでなくIL-17/IFNg共産生細胞もM3R反応性Th17細胞には含まれることを確認した。4)臨床像の比較を行い、M3R反応性Th17細胞陽性例は、陰性例と比較し、M3R第2、3細胞外領域に対する抗体価が有意に高く、疾患活動性が高い傾向が明らかになった。5)M3R反応性Th17細胞陽性例において、血中M3R反応性Th17細胞と同一T細胞クローンが炎症局所の唾液腺に存在することを明らかにした。 以上の解析を行い、論文にまとめて発表した。その後追加で以下解析を行なっている。 1)SS末梢血中におけるTh17細胞以外のT細胞サブセット、およびB細胞サブセットの頻度と相関関係の解析。2)各T細胞サブセット間における炎症局所との同一T細胞クローンの頻度を解析(M3R反応性Th17細胞クローンの頻度と比較解析)。3)頻度の高いT細胞クローンに着目した末梢血T細胞サブセットと炎症局所環境の解析。 今後炎症局所において頻度の高かったT細胞クローンに着目して末梢血T細胞サブセットとの関係性を解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画のうち、M3R反応性Th17細胞の検出、T細胞エピトープの決定、末梢血中でのM3R反応性Th17細胞の分離、唾液腺でのM3R反応性T細胞の検出、M3R反応性Th17細胞と臨床像との相関解析は順調に完了し、論文にまとめて報告することができた(M3 muscarinic acetylcholine receptor-reactive Th17 cells in primary Sjogren's syndrome. JCI Insight. 2020;5(15):135982. Published 2020 Aug 6. doi:10.1172/jci.insight.135982)。以上より、研究実施計画としては十分な進行と考えている。現在計画をより発展させ、末梢血中M3R反応性Th17細胞のTCRレパトワクローナリティーを末梢血中のT細胞サブセットと比較検討し、クローナリティーの高い、何らかの自己抗原を認識して増殖しているT細胞サブセットの同定を進めている。またM3R反応性Th17細胞に関しては、末梢血中から分離を試み、in vitroの条件で培養増殖させ、その機能解析をさらに進めていけるよう条件設定をしている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の解析を予定している。 ・末梢血中M3R反応性Th17細胞のTCRレパトワクローナリティーを末梢血中のT細胞サブセットと比較検討し、クローナリティーの高い、何らかの自己抗原を認識して増殖しているT細胞サブセットの同定を行う。 ・クローナリティーの高い、何らかの自己抗原を認識して増殖しているT細胞サブセットと同一T細胞クローンが炎症局所である唾液腺や、間質性肺炎を有するSS患者における肺胞洗浄液においてどの程度の頻度で存在するか解析する。 ・M3R反応性Th17細胞を末梢血中からフローサイトメトリーを用いて分離をし、in vitroの条件で培養増殖させ、その機能解析を進める。(サイトカイン産生能やT細胞サブセット間の可塑性検討)。 ・上記にて同定したT細胞クローンとB細胞サブセットの相関関係解析。
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