研究課題
全身性エリテマトーデス(SLE)の発症及び病態形成にはI型インターフェロン(IFN)が深く関与していることが示唆されている。しかし、SLEは人種的背景の違いによる影響が非常に大きい疾患であり、IFNの発現量も大きく異なる。SLE、特にSLEの重症臓器病変であるループス腎炎(LN)の発症及び病態形成におけるIFN経路の役割は未だ不明である。本研究では日本人SLEにおけるIFNの発現レベルと臨床病型等の検証を行うとともに、SLEのマウスモデルであるimiquimod-induced lupusを用いてSLEの発症・病態形成におけるIFN経路の詳細な解析を行い、SLEの新規治療/予防戦略を確立することを目的としている。本年度は、SLE患者約100人の血清中のIFNの測定をELISAの約100倍の測定感度を持つbioassay法を用いて測定した。現在臨床病型や病勢評価指標との関連を解析中である。Imiquimod-induced lupusモデルマウスを用いた実験では、我々はまずC57BL/6マウスでも同様にSLE様病態を誘導できるかを検証した。マウスにImiquimodを週3回塗布したところ、8週時点で、1)血清中の抗ds-DNA抗体の上昇、2)尿蛋白の増加、3)腎組織のPAS染色にてメサンギウム領域の増加と蛍光抗体法で糸球体基底膜へのIgG沈着、4)腎組織内のIFN関連遺伝子の上昇を確認でき、ヒトSLE及びLNと類似した血清学的所見、腎組織所見を呈した。以上より、C57BL/6を用いたImiquimod-induced lupusモデルマウスにおいて、IFNがSLE及びLNの病態形成に重要な役割を果たしていることが示唆された。今後はIFNAR欠損マウス並びにポドサイト特異的IFNAR欠損マウスを用いてSLE病態形成におけるIFNの役割の詳細な解析を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
Imiquimod-induced lupusモデルマウスの原著論文はBalb/cマウスで行われており、C57BL/6マウスにおけるデータが無いため、本年度はまず、C57BL/6マウスでも同様にSLE様病態を誘導できるかを検証した。C57BL/6マウスにImiquimodを週3回塗布したところ、8週時点で、1)血清中の抗ds-DNA抗体の上昇、2)尿蛋白の増加、3)腎組織のPAS染色にてメサンギウム領域の増加と蛍光抗体法で糸球体基底膜へのIgG沈着、4)腎組織内のIFN関連遺伝子の上昇を確認でき、ヒトSLE及びLNと類似した血清学的所見、腎組織所見を呈した。以上より、C57BL/6マウスを用いたImiquimod-induced lupusモデルマウスにおいてもヒトSLEに類似した所見を得られることが確認でき、IFNがSLE及びLNの病態形成に重要な役割を果たしている証左を得られたことは、本研究の推進において大きな意味を持った。
本年度はC57BL/6マウスを用いたImiquimod-induced lupusモデルマウスの系を確立できたと同時に、SLE及びLNの病態形成におけるIFNの重要性についても確認することができた。今後はIFNAR欠損マウス並びにポドサイト特異的IFNAR欠損マウスを用いてimiquimod-induced lupusの病態解析を行い、自己反応性B細胞による抗体産生や腎炎の組織学的解析などを通して、SLEの並びにLNの病態形成におけるIFNの役割の詳細な解析を行っていく予定である。
本年度、予定していたIFNAR欠損マウスを用いたImiquimod-induced lupusモデルマウスの解析がマウスの繁殖スケジュールの関係で行えず、300,452円の次年度使用額が発生した。これらは来年度分で行う当該実験の費用に当てる予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Cellular & Molecular Immunology
巻: online ahead of print ページ: epub
10.1038/s41423-020-0384-0
Allergology International
巻: 68 ページ: 430~436
10.1016/j.alit.2019.06.004