研究課題
全身性エリテマトーデス(SLE)は全身の臓器障害を特徴とする予後不良の自己免疫疾患である。関節リウマチ治療がパラダイムシフトする中で、SLE治療は依然としてステロイド及び免疫抑制薬による非特異的免疫抑制がその中心であり、ループス腎炎(LN)を始めとする難治性病態に対する特異的治療法は開発されていない。SLEの発症及び病態形成にはI型インターフェロン(IFN)が深く関与していることが示唆されているが、その発現レベルは人種毎に大きく異なることが知られている。そのため本研究では、SLE/LNの発症及び病態形成におけるIFN経路の役割を、日本人SLE患者検体及びループスモデルマウスを用いて解析し、IFN経路を標的としたSLEの新規治療法開発の基盤構築を目的とした。はじめに、日本人SLE患者のIFN活性を測定したところ、他の膠原病疾患と比べIFN活性が明らかに高かった。さらに日本人SLE患者では、他人種のSLE患者と同等以上のIFN活性があることが判明し、日本人SLE患者においてもSLEの病態形成にIFNが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。また、IFN活性は特定の罹患臓器プロファイルやSLEの疾患活動性指標などと相関し、疾患活動性の低下に伴いIFN活性も低下する傾向を認めた。IFN活性がSLEの再燃予測や疾患活動性マーカーとして有用であるかは未だ議論されているところではあり、引き続き検証が必要である。本研究で用いたループスモデルマウスでも腎臓に免疫複合体の沈着を認め、腎局所においてIFN経路の活性化を認めた。以上からも、LNの病態形成においてIFNが重要な役割を果たしている可能性が示唆された。今後もSLE/LNの病態形成におけるIFN経路の役割、その作用機構について解析を進めて行く予定である。
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Lupus Science & Medicine
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10.1038/s41423-020-0384-0