全身性エリテマトーデス (systemic lupus erythematosus; SLE) は多彩な臓器障害を示す自己免疫疾患であり、免疫学的な異常として形質細胞様樹状細胞 (plasmacytoid dendritic cell; pDC) によるI型interferon (IFN) 産生亢進、T cell receptor (TCR) を介したT細胞の異常な反応とB細胞による自己抗体産生が特徴である。ゲノムワイド関連解析などによりこれらの免疫細胞に遺伝的背景に基づく異常が存在することが示唆されている。 患者の免疫細胞の絶対数が少ないこと、治療及び環境などの背景因子の不均一性などがこれまで研究を難しくしている。そこで申請者らは宿主のゲノムを引き継ぎ、環境及び治療の影響が少なく、無限のソースとなる人工多能性幹細胞 (induced pluripotent stem cell; iPS細胞) に注目し、SLE患者5人よりiPS (SLE-iPS) 細胞を樹立した。 我々は既報のマウスやヒトES細胞での方法を吟味し、Sac法 (Takayama et al. Blood. 2008)をModifyした方法を用いて、ヒトiPS細胞から免疫細胞への分化培養を行い、IFN産生樹状細胞、CD3陽性細胞、CD56陽性細胞、CD19陽性/VpreB・λ like発現細胞への分化培養に成功した。またSLE関連Variantsのゲノム編集を行い、IFN産生樹状細胞における機能改善/増悪を確認した。Sac法ではDay14時点に得られる幹細胞数に限りがあり、我々はElizabeth S Ngらの報告(Nat Protoc. 2008)を参考にし、feeder free、animal product freeでの分化に取り組み、100倍以上の幹細胞誘導効率を達成した。
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