研究課題
本研究では細胞周期制御分子であるCDK4/6の阻害が滑膜線維芽細胞からの炎症メディエーターを抑制する機序を解析し、そのメカニズムがAP-1の精緻なコントロールによってなされることを明らかにした。AP-1の発現や炎症性サイトカインの産生は、サイトカイン刺激によって誘導されるが、血清の存在によってその誘導が著しく増強し、血清の非存在下では著しく減弱する。CDK4/6活性は血清濃度によって変動するため、CDK4/6の活性が血清依存的に決定されるAP-1の発現レベルおよび、サイトカイン刺激後の誘導と関連すること明らかにした。分子学的なメカニズムの解析では、AP-1構成因子のユビキチン化がCDK4/6の活性に依存して抑制されていること、CDK4/6を抑制すると、ユビキチン-プロテアソーム系を介してAP-1構成因子の分解が亢進することを明らかにした。CDK4/6阻害、サイトカイン刺激で変動する遺伝子群・シグナルパスウェイを解明するためRNAシークエンスを行ったところ、サイトカイン刺激で誘導され、かつCDK4/6阻害で抑制される遺伝子群はAP-1モチーフを共有していた。すなわち、滑膜線維芽細胞でCDK4/6依存的に制御されている遺伝子群がAP-1に依存して制御されていることを網羅的解析でも証明した。AP-1モチーフを有する遺伝子は多数存在するが、興味深いことにCDK4/6依存的に制御されている遺伝子群はごく一部であった。これらの遺伝子群をパスウェイ解析すると、関節リウマチ(RA)やIL-17シグナル経路、JAK-STAT経路など、RAと関連の深いpathwayが上位にランクされた。これらの結果は、CDK4/6阻害は網羅的にAP-1関連遺伝子を抑制するのではなく、RAに関連の深い遺伝子群を選択的に抑制する可能性が示唆された。
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Arthritis & Rheumatology
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Clinical and Experimental Rheumatology
Frontiers in Pharmacology
10.3389/fphar.2020.607713. eCollection 2020.