研究実績の概要 |
申請者らは2019年度の科学研究費申請において、T細胞の細胞代謝と線維化の関係を明らかにするため、実験を計画した。計画書において、申請者らは申請時点において、ブレオマイシン誘導性間質性肺炎モデルにおいて、代謝阻害剤X, Yについて、肺における炎症を改善させることを予備実験で提示していた。しかし、ブレオマイシン誘導性間質性肺炎において、炎症と同時に治療対象となる線維化については未だ代謝阻害剤の効果は未知数であった。特に、難病とされるヒトの全身性強皮症において、炎症を止めるとされる副腎ホルモン剤などの治療が線維化になんら効果がなく、予後改善効果に乏しいことが知られている。従って、代謝阻害剤が炎症スコアを改善せしめたとしても、実際に間質性肺炎による肺の線維化を止めることを示すことが何より重要である。申請者らは2019年度にマウスでの実験を行い、炎症スコアと同様に代謝阻害剤X, Yは線維化スコアを改善せしめることを立証した。具体的にはブレオマイシン誘導性間質性肺炎モデルマウスを用い、対照群、代謝阻害剤X, Y, およびXとYの併用群と4群に分けて、実験を行った。X単独、Y単独群は有意差をもって対照群より線維化が改善していた。また、実験の目的にある細胞代謝はいくつかの経路が相互作用している。XとYは別の経路の代謝阻害効果を有するが、併用により相乗効果があることを申請者らは示した。2020年度においては肺の細胞集団をFACSにて調査した。有意に肺線維症ではIL-17陽性T細胞が増加していたことを見出した。これは申請者らの仮説に合致する重要な所見である。今後はT細胞と線維芽細胞の相互作用をin vitroでキーとなる分子の同定を探索していく方針である。
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