マスト細胞は、古典的にはアレルギー応答における最も重要なエフェクター細胞の1つとして知られているが、近年肥満や動脈硬化など脂肪組織における慢性炎症が関与する病態にも関係することが報告されており、脂肪組織とマスト細胞間での何らかのインタラクションが存在することが示唆される。我々はマスト細胞と脂肪組織の関連性を検討するため、マウス骨髄由来マスト細胞(BMMC)にマウス皮下脂肪から採取したADSC由来の脂肪細胞の培養上清を添加することで、BMMCがマクロファージ用の形質に転換することを見出している。 2019年度はマクロファージ様マスト細胞のフェノタイプをin vivoで検討した。すなわちマウス腹腔内にマクロファージ様マスト細胞を複数回に亘って移植し、高脂肪食による肥満モデル並びに水酸化アルミニウムとOVAによるアレルギー性気道炎症モデルに対する影響を評価した。その結果、肥満モデルでは細胞移植による体重増加の悪化や血中トリグリセリド、遊離脂肪酸の上昇が観察された。しかしアレルギー性気道炎症モデルでは組織学的解析あるいはBALFの炎症細胞数において有意な変化を見出せなかった。こうした影響を及ぼすにあたりマクロファージ様マスト細胞がどの組織に移行して機能しているかをXenoLight DiR標識を施したうえでIVIS imaging systemにより観察すると肝臓への集積が観察され、肝臓へ遊走し機能していると考えられた。
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