研究課題
本研究では、動脈硬化性変化を高率に伴い、炎症性サイトカインの発現がみられるIgG4関連動脈周囲炎/後腹膜線維症特有の病態について、当グループで保有している本疾患患者の臨床情報や組織検体、またTh2優位の免疫反応とリンパ増殖性疾患を起こしIgG4関連疾患モデルマウスであるLAT Y136F変異マウスを用いて、本疾患の病態と動脈硬化病態との関わり、動脈硬化促進因子への介入が本疾患に及ぼす効果を明らかにし、IgG4関連動脈周囲炎/後腹膜線維症の新たな治療法の開発及び確立のための基礎的な知見を得ることを目的とした。今年度、IgG4関連疾患患者における動脈病変(Periarteritis:PA)と動脈硬化との関連について、当科で診療する症例を対象に経時的データを用いて解析した。観察期間中にPAを新たに発症した症例の50%において、もともと血管石灰化など動脈硬化性変化のみられている部位にPAを発症していた。また、PA+群の治療後経過にて罹患血管の石灰化病変の増悪を認めた。これらのことから、PAと罹患部位の動脈硬化性変化との関連が示唆され、相互に影響を与えている可能性が考えられた。多施設研究を進め、さらに検討を行っていく。LAT Y136変異マウスにおいて、肺血管周囲病変は20週齢でほぼ全例に認められる一方で、腎血管周囲病変は30-40%程度にとどまり、後腹膜病変によると考えられる水腎症は10%程度に認められた。動脈硬化は顕著にみられないため、食餌・食塩負荷等による動脈硬化促進とそれによる血管病変形成促進の有無を評価する必要性がある。
4: 遅れている
昨今の血管内治療を主体とした治療方針の変化に伴い、またコロナ禍での手術制限などにより、動脈周囲/後腹膜病変の外科的治療が行われる機会が減ったため、ヒト病理検体の確保に時間を要している。また、ホモLAT Y136変異マウス作成に時間を要し、さらに腎血管周囲病変や後腹膜病変による水腎症の誘導の効率はよくなく、検体数の確保に時間を要する。同マウスにおいて動脈硬化の進展は顕著でなく、動脈硬化促進の有効な処置の検討が必要と考えられ、達成度を遅れているとした。
今年度は、多施設共同研究にて臨床データから動脈周囲/後腹膜病変と動脈硬化との関連についてさらに解析を進める。また、ヒトIgG4関連疾患病変において、病理検体確保を図り、その上で浸潤細胞、産生サイトカインの評価を行い、動脈硬化性変化との関連についての検討を進める。LAT Y136Fホモ変異マウスの動脈硬化促進についてより有効な処置を同定し、マウス動脈周囲/後腹膜病変においても動脈硬化の進展との関連を解析する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
Rheumatology (Oxford)
巻: 60 ページ: 3317-3325.
10.1093/rheumatology/keaa783.
Mod Rheumatol
巻: 31 ページ: 241-248
10.1080/14397595.2019.1709942.
BMC Nephrol
巻: 22 ページ: 34
10.1186/s12882-021-02240-1.
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
10.1080/14397595.2021.1878623.
Dig Liver Dis
10.1016/j.dld.2021.02.009.