研究実績の概要 |
関節リウマチは、全身の関節に慢性炎症を来す難治性の自己免疫疾患であり、関節内の滑膜組織が増生し、進行性に軟骨と骨が破壊される。近年、分子標的治療薬の登場により、従来の治療法では疾患活動性を十分にコントロールできなかった症例においても、関節破壊の進行を強力に阻止し、病状を寛解に持ち込むことが可能となった。現在、様々な分子標的治療薬が関節リウマチ治療において臨床応用され、その骨破壊抑制効果が示されているが、生体内に投与した分子標的治療薬が実際に、“いつ”、“どこで”、“どのようにして”効果を発揮するのか、その薬理作用の詳細については不明な点が多い。本研究では、分子標的治療薬の中でもT細胞選択的共刺激調節剤(CTLA4-Ig)に焦点を当て、関節炎を誘導した蛍光標識レポーターマウスに異なる色で蛍光標識したCTLA4-Igを投与し、関節炎におけるCTLA4-Igの生体内動態を二光子励起顕微鏡で解析した。その結果、CTLA4-Ig投与直後から炎症滑膜にCTLA4-Igの強い集積を認め、特にCX3CR1陽性の単球・マクロファージ系細胞への強い結合が認められた(Sci Rep, 2020)。さらに、CTLA4-Ig結合細胞の網羅的遺伝子発現解析を行った結果、CTLA4-Igと結合したCX3CR1陽性細胞では、結合していないCX3CR1陽性細胞と比較し、MHC classⅡを含む多くの免疫関連分子の発現量の変動が認められた。薬剤が標的細胞に及ぼす効果や薬効発現の機序をin vivoで評価する本研究は今後、臨床現場において各々の特徴に応じた適切な薬剤選択に役立つことが期待される。
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