研究課題/領域番号 |
19K17912
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
岩崎 成仁 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (80808006)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | Th2細胞 / マクロファージ / ヒスタミン |
研究実績の概要 |
我々はIgEー肥満細胞経路以外に鼻炎症状を誘導する因子として、抗原特異的Th2細胞とマクロファージの役割に焦点をあてて解析した。まずin vitroにおいて、骨髄由来マクロファージとTh2細胞の共培養実験を行った。マクロファージとTh2細胞に抗原(OVApep)を加えて共培養すると著明なヒスタミンの産生を認めた。次にヒスタミンを産生することができないヒスタミン合成酵素欠損マウスの骨髄からマクロファージを誘導して実験を行った。その結果、ヒスタミン合成酵素欠損マクロファージとTh2細胞に抗原を加えて共培養を行っても、ヒスタミンは産生されなかった。これらのことから、マクロファージは抗原を介してTh2細胞と相互作用することにより、ヒスタミンを産生することが明らかになった。次にin vivo実験を行い生体内におけるTh2細胞とマクロファージの役割を検討した。抗原特異的Th2細胞移入マウスモデルを用いた解析を実施した。このマウスモデルでは、Th2細胞を移入し5週間後に抗原を鼻腔内へ投与すると即時型反応であるくしゃみが誘導された。さらに、クロドロン酸内包リポソームを腹腔内へ投与し、マクロファージを除去するとくしゃみは抑制された。また、ヒスタミン合成酵素欠損マウスにTh2細胞を移入し抗原を投与してもくしゃみは誘導されなかった。さらに、ヒスタミンH1受容体拮抗薬であるジフェンヒドラミンを投与することによりくしゃみは抑制された。これらのことから、Th2細胞とマクロファージにより誘導されるくしゃみは、H1受容体を介する反応であることが明らかとなった。さらに、ヒスタミンH4受容体拮抗薬であるJNJ7777120を投与すると鼻粘膜への好酸球浸潤が抑制された。このことから、鼻粘膜への好酸球浸潤にはH4受容体が介することが明らかになった。これらの研究成果をPLoS One誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マクロファージとTh2細胞とヒスタミンの役割についてin vivoとin vitroの両モデルを用いて解析し、論文発表することができたので、おおむね順調に進展していると考える。しかし、COVID-19の影響により、3ヶ月程研究が十分に実施できない期間があった。このため、一部の実験が次年度へ繰り越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究からマクロファージとTh2細胞とヒスタミンが相互作用することにより、即時型反応(くしゃみ)を誘導することが明らかになった。しかし、この詳細な機序については不明な点が多く、さらに研究が必要である。特に、in vivoにおいてマクロファージ由来ヒスタミンがくしゃみ反応に関与しているか検討する必要がある。過去に報告のない新規現象であり、これまでとは異なった分子に着目して解析する予定である。また、in vitroにおいてTh2細胞がCD3/CD28刺激によりヒスタミンを産生する現象を同定した。Th2細胞由来ヒスタミンが生体内において何らかの役割を担っているかを抗原特異的Th2細胞移入マウスモデルを用いて解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、3ヶ月程度研究が十分にできない期間があった。このため、当初予定していたマウスモデルを用いた実験ができず、その分の研究費が次年度へ繰り越すこととなった。
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