最終年度はTh2細胞が産生するヒスタミンに焦点をあてて解析した。まず、in vitroにおいて誘導したTh2細胞をCD3/CD28抗体で刺激した。その結果、Th2細胞がヒスタミンを産生するこが確認された。Th2細胞におけるヒスタミン合成酵素の発現もmRNAレベルで亢進していた。ナイーブCD4 T細胞とTh1細胞をCD3/CD28抗体で刺激しても、ヒスタミンは産生されなかった。これらの結果から、ヒスタミン産生はTh2細胞に特異的であると考えられた。次に、in vivo実験により、Th2細胞由来ヒスタミンの生体内での役割について検討した。我々はすでに抗原特異的記憶Th2細胞移入マウスモデルを樹立している。ヒスタミン合成酵素欠損マウスを用いて、ヒスタミンを産生しないTh2細胞を作製し、移入するモデルを用いて検討を行った。その結果、ヒスタミン合成酵素欠損Th2細胞を移入したマウスでは、鼻粘膜へのTh2細胞の浸潤が抑制された。この結果は、Th2細胞が産生するヒスタミンが、アレルギー病態の形成に関与することを示唆している。これらの研究成果をInflammation Research誌に報告した。 研究期間全体を通して、ヒスタミン産生機構に着目して研究を実施した。その結果、①マクロファージはTh2細胞と相互作用することでヒスタミンを産生する②Th2細胞はT細胞受容体への刺激によりヒスタミンを産生する、という2つの新規ヒスタミン産生機構を同定した。さらに、抗原特異的記憶Th2細胞移入マウスモデルを用いて、マクロファージとTh2細胞由来ヒスタミンが生体内において、アレルギー病態の形成に関与することも明らかにした。今後、詳細な機序について検討を進めていく予定である。
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