研究課題
喘息に伴う気道炎症は、Th2サイトカン産生増加による炎症細胞の浸潤と活性化、気道過敏性の亢進を特徴とする。喘息の有病率、死亡率、再発率は成人男性より成人女性で高く、「女性」は重症喘息患者のフェノタイプを規定する項目のひとつと考えられる。これまで、女性またはメスマウスにおけるTh2サイトカイン産生の増加やCD103陽性樹状細胞の17β-エストラジオール依存的な機能亢進など、女性におけるTh2型免疫応答の亢進メカニズムを明らかにしてきた。それらの結果に基づいて本研究では、Th2型樹状細胞の形成や2型自然免疫リンパ球の活性化に重要な役割を果たす気道上皮組織に着目した。気道上皮組織の中で気道上皮基底幹細胞は組織構築をつかさどる中心細胞であり、ダニアレルゲンなどで誘導されるATP刺激に依存してサイトカインを産生し炎症を惹起する中心細胞でもある。本年は、まずダニアレルゲン投与喘息モデルマウスを作成した。ダニアレルゲンの抗原量を(1~20 ug)またはImjectアラムの有無による喘息モデルを作成し、好酸球性気道炎症の程度と性差を比較した。その結果、至適な抗原量において、性による好酸球性炎症の増加が認められ、加えて臨床的に認められる喘息症状と類似の喘息兆候が観察された。これらは、これまでに報告のある喘息に関して性に起因する疫学的知見と一致する結果であり、本研究を遂行するうえで有用なダニアレルゲン誘導喘息モデルマウスの作成に成功した。
3: やや遅れている
ダニアレルゲン気管内投与による喘息モデルの作成過程において、抗原投与量の違い、アジュバントの有無により惹起される免疫応答に違いが認められた。本研究の目的である性依存的な気道上皮基底幹細胞の機能変化を明らかにするために適した条件を検討する必要が生じたため、最も研究に適した喘息モデルの検討行う必要性が生じた。また、得られた喘息モデルにおいて認められる喘息兆候と、臨床疫学的に報告される病態との整合性を確認するため、種々の作成条件を検討した。
ダニアレルゲン誘導喘息モデルマウスの作成に時間を要したが、研究の目的を完遂するために有用なモデルマウスの作出に成功した。今後、アレルゲン受容体の発現量や気道上皮基底幹細胞の機能に関する性依存性を明らかにするための実験を、研究計画に従って遂行していく予定である。
気道上皮基底幹細胞の性依存的免疫応答を解明するために至適な喘息モデルを作成するために、ダニアレルゲン量やアジュバントの有無などの条件検討を行った。そのため、本年度に使用予定だった気道上皮細胞の単離及び遺伝子発現解析のための予算を次年度に繰り越して使用する。
すべて 2019 その他
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