本研究の仮説は、「がん化学療法中の患者において概日リズムの障害があり、それを是正することにより菌血症の発症を抑制し予後を改善できる」である。がん化学療法中の患者において概日リズムの有無を確認し、障害された概日リズムを是正することで菌血症の予後が改善するかを検証する。本研究の仮説検証過程は以下の3つである。(1)がん化学療法患者における概日リズム障害を時計遺伝子の定量により評価する。(2)概日リズムの是正が可能かどうか確認する。(3)概日リズムの是正が菌血症の発症と予後に影響するかどうか評価する。 初年度は化学療法患者において菌血症を来した症例を網羅的に解析し、口腔内常在菌と菌血症とに細菌学的な関連があることを見出した。化学療法中の患者で起こる菌血症の約半分の症例(46.2%)は口腔内細菌由来であることが分かった。また次年度は化学療法中の発熱患者において好中球減少の程度とその後の発熱エピソードの関連を、好中球減少度尺度を用いて予測するモデルを作成しそれを確立した。治療後7日目までの好中球減少程度積算値でその後の発熱イベントを予測できることが分かった。最終度においては、好中球だけではなくリンパ球の減少程度においても同様に検討し、造血幹細胞移植後の感染症や非再発死亡、および再発死亡との関連について報告した。
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