研究課題/領域番号 |
19K17930
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
阪下 健太郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員研究員 (30838280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ツツガムシ病 / リケッチア / TSA |
研究実績の概要 |
昨年度はツツガムシ病リケッチアのKuroki株のC末端にHAタグが結合したTSA蛋白質を発現するプラスミドを作成した。この発現プラスミドを293T細胞に導入し、cell lysateを調製した。抗HA抗体を用いウエスタンブロッティングを行った結果、予想される分子量のバンドが検出された。同様にツツガムシ病患者血清を用い、ウエスタンブロッティングを行った結果、予想される分子量のバンドが検出された。これらの結果は、作成した発現プラスミドを293T細胞に導入したcell lysateはツツガムシ病の診断に利用可能であることを示している。今年度は、Shimokoshi株、Gilliam株、Kato株のTSA発現プラスミドを作成した。抗HA抗体によるウエスタンブロッティングの結果、Gilliam株では予想される分子量のバンドが検出されたが、Shimotoshi株、Kato株では検出されなかった。塩基配列を確認したが問題はなかった。発現が検出されたKuroki株、Gillian株も、他のHAタグ蛋白質に比べると、バンドの濃さは非常に低かった。これらの結果は、TSA蛋白質がヒト293T細胞に対して細胞毒性を持っていることを示唆している。TSAはツツガムシ病リケッチアの細胞表面蛋白質であり、宿主細胞の細胞質に露出されるので、TSAによる細胞毒性は病原性に関与しているかもしれない。発現が検出されなかったShimotoshi株とKato株は、発現が検出されたKuroki株とGilliam株よりも強い病原性を持っているのかもしれない。更なる研究が必要である。次に、TSA由来のさまざまなペプチドを合成し、患者血清に存在する抗体が主に認識するペプチドを数個同定した。最終的にこれらのペプチドを用い診断を行うことが出来ることを突き止めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、各株のTSA発現プラスミドを作成することに成功した。しかし、細胞毒性があり、診断に利用することが出来なかったが、病原性との関連を示唆する興味深い成果を得ることが出来た。TSA発現プラスミドを用いた診断法は開発することが出来なかったが、患者血清の抗体が認識するTSA由来ペプチドを同定した。それらのペプチドを用いた新規診断法を開発した。この方法を用いて、東南アジアの患者を解析する予定であったが、新型コロナウイルスの流行により渡航することができなかった。東南アジアにおける疫学研究は次年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
東南アジア(インド、ベトナム、フィリピン)の共同研究者が、病院に来た患者ではなく、自ら各家庭に赴いて承諾を得た方から血清を採取している。その血清にツツガムシ病リケッチアの抗原に結合する抗体が存在するかどうか解析する。そのような抗体が存在することは、そのヒトが過去もしくは現在リケッチアに感染していることを示している。これにより、何らかの疾患を持って病院に来た人達の間ではなく、普通に市中に暮らしている人達の間で、何割くらいのヒトがツツガムシ病リケッチアに感染しているのか明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
開発した新規ツツガムシ病診断法を用い東南アジア(インド、ベトナム、フィリピン)における罹患率を解析する予定であったが、新型コロナウイルスの流行のため、渡航することが出来なかった。本研究を次年度に行う。
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