研究課題/領域番号 |
19K17932
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
藤本 康介 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 助教 (30802805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | IgA / 粘膜ワクチン / 腸内細菌 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、これまでの腸管樹状細胞の詳細な解析を基盤として新規開発したCpG DNAおよびβ1,3-グルカンをアジュバントとした次世代粘膜ワクチンをヒト肥満特異的な病原腸内細菌の制御に応用することを目指すものである。この次世代ワクチンは、抗原、CpG DNA、β1,3-グルカンを不完全フロイントアジュバントとともにマウスに筋肉注射することによって、血中の抗原特異的なIgGだけでなく、糞便中に抗原特異的なsIgAを誘導できるというものである。次世代粘膜ワクチンを用いることで、コレラ毒素誘導性の下痢マウスモデルや、市中肺炎の原因菌として最大の肺炎球菌性肺炎マウスモデルの著明な改善を認めた。さらに、次世代粘膜ワクチンの抗原として、肥満や糖尿病と関連が報告されているClostridium ramosumを用いることで、C. ramosum依存的な肥満マウスモデル(C. ramosumを多く含む肥満者糞便を定着させたノトバイオートマウスにおいて高脂肪食を摂取させるモデル)における体重増加や糖尿病の発症を抑制できることを明らかとした。しかし、このマウスモデルで使用しているワクチンの基剤(不完全フロイントアジュバント)は副作用のためヒトへの使用が難しい。そのため、ヒトへの応用を実現するためには、ワクチン製剤の基剤の変更が必須であった。ワクチン製剤の基剤の候補としては、これまでヒトへの使用実績のある、「リポソーム製剤」や「エマルジョン製剤」の検討を行った。いずれの製剤においても、マウスモデルにおいて抗原特異的な血中IgGや抗原特異的な糞便IgAの誘導を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、ヒト肥満に関連する腸内細菌を制御することで、次世代粘膜ワクチンが肥満の病態を改善する新しいツールになることを目的としている。目的達成のために、1)肥満者に特異的な腸内細菌に対するワクチン効果の解析、2)ワクチンのターゲットとなる菌において菌特異的な抗原の探索、3)ヒトへの臨床応用のため不完全フロイントアジュバントに変わる基剤の探索を検討する。1)に関しては、肥満者の腸内細菌の全ゲノム解析を行いC. ramosum以外の肥満関連腸内細菌の同定を進めている。2)に関しては、C. ramosumの抗原探索を進めているが、良い抗原の同定には至っていない。3)に関しては、新規基剤としてリポソーム製剤やエマルジョン製剤を試し、いずれの製剤においても抗原特異的な免疫応答が誘導できることを示した。以上から、実験計画通り概ね順調に順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
肥満者に特徴的な腸内細菌の同定、ならびにそれらの腸内細菌をターゲットとしたワクチンを作製するための抗原の探索を継続して行う。ヒトへの臨床応用に向けて、リポソーム製剤あるいはエマルジョン製剤のどちらがより効果的であるか、また製剤としての実用性(作製方法なども含めて)や安全性についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究においては、ヒトワクチンへの基剤変更のための予備検討を重点的に行った。そのため、購入済みの試薬で代用できる部分もあった。次年度以降、大規模な動物実験などを予定しているため、一部を繰り越した。物品費を中心として研究を進めるために使用する。
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