研究課題
同種造血幹細胞移植後の中期から晩期にかけて、水痘・帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus, VZV) の再活性化が比較的高頻度に生じることが知られている。本研究では同種造血幹細胞移植後に弱毒生水痘ワクチンを接種した患者の特異的免疫誘導の有無を評価し、ワクチンの有効性について検証することを目的としている。まず、同種造血幹細胞移植後に弱毒生水痘ワクチンを接種した25例について、保存検体を用いてワクチン接種時のCD4陽性T細胞数、CD8陽性T細胞数、CD4陽性T細胞/CD8陽性T細胞比、VZV IgGなどを測定した。VZV IgGについてはワクチン接種後も経時的に測定した。ワクチン接種後に一部の症例では抗体価が上昇したが、抗体価の上昇が全くみられない症例もあった。また、ワクチン接種後にVZV再活性化を起こした症例も2割程度みられたが、ワクチン接種後のVZV IgG値、ワクチン接種時のCD4陽性T細胞数、CD4陽性T細胞/CD8陽性T細胞比が、ワクチン接種後のVZV再活性化率の予測に有用であることを示した。さらに、同種造血幹細胞移植後に長期生存している143例について、保存検体を用いて麻疹・風疹・ムンプスウイルスの各抗体価を測定した。抗体価の減少率はウイルスによって違いはあるものの、いずれも経時的に低下していた。また、これらのウイルスに対するワクチン接種前後の抗体価を測定したところ、抗体価の陽転割合はウイルスによって異なっていた(麻疹・風疹ウイルスにくらべてムンプスウイルスの陽転割合は低かった)。しかし、健常人と比べるといずれのワクチンも反応性は乏しかった。今後は、ワクチン接種後の細胞性免疫の誘導の有無についても評価する。
2: おおむね順調に進展している
液性免疫の評価は概ね終了しているが、細胞性免疫の評価については、途中段階である。現在、最適な細胞性免疫の評価法を検討している。
2020年度は、ワクチン接種後の細胞性免疫について主に評価する。さらに今後は、ワクチン接種後の免疫反応の結果と臨床情報とを統合して、どのような患者でワクチンが有効か、そうでないかを解析する予定である。
一部の物品で、年度をまたいでの発注および納品になる可能性があった。このため、研究、実験の進捗を加味した上で、経理上の締めを安全に終了させるため、次年度持ち越しの上使用することとした。計画として、年度明け次第、年度をまたいでの可能性のあった物品の発注を行う。このため、次年度使用分の計画には大きな影響は与えず、計画通りの使用が可能であると考えている。
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