同種造血幹細胞移植後の水痘ワクチン接種による特異的免疫反応の解明

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K17933
• 研究機関: 鳥取大学
• 研究代表者: 河村 浩二 鳥取大学, 医学部, 講師 (20548763)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 同種造血幹細胞移植 / 水痘・帯状疱疹ウイルス / 弱毒生水痘ワクチン / 麻疹ウイルス / 風疹ウイルス / ムンプスウイルス / 液性免疫 / 細胞性免疫

研究実績の概要

同種造血幹細胞移植後には、水痘・帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus, VZV) の再活性化が比較的高頻度に起こることが知られている。本研究では同種造血幹細胞移植後に弱毒生水痘ワクチンを接種した患者のVZV特異的免疫誘導の有無を評価し、弱毒生水痘ワクチンの有効性について検証することを目的としている。同種造血幹細胞移植後に弱毒生水痘ワクチンを接種した25例について、定期的に保存した検体（血漿や末梢血単核細胞）を用いてVZV特異的免疫反応の評価を行った。液性免疫について評価は概ね昨年度で終了している。今年度は細胞性免疫について評価したが、COVID-19の感染拡大による移動自粛の影響のため、まだ十分に評価できなかった。次年度も引き続き、細胞性免疫について研究を継続する予定である。
また、同種造血幹細胞移植後に2年以上生存している143例の患者保存検体（血漿）を用いて麻疹・風疹・ムンプスウイルスの各抗体価をEIA法で経時的に測定した。最終的に移植後2年の時点で再発していない135例に限定して抗体の陰性化に関わる因子を解析したところ、慢性移植片対宿主病（GVHD）の既往のある群が、麻疹および風疹では陰性化率が高い傾向にあった。また、ROC曲線を用いて移植前の各抗体価のカットオフ値を求めたところ、いずれもカットオフ値以下の場合、移植後2年で抗体価の陰性化率が有意に高いことが示された。さらに、移植後に麻疹・風疹・ムンプスウイルスのワクチンを1回接種した患者の各抗体価を測定したところ陽転化率は、それぞれ64％、72％、36％であった。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

同種造血幹細胞移植後の弱毒生水痘ワクチン接種後の液性免疫の評価は終了している。細胞性免疫の評価については、COVID-19の感染拡大による移動自粛の影響もあって研究が遅延しており、研究期間を1年延長した。一方、麻疹・風疹・ムンプスウイルスの抗体価およびワクチンの反応性については、解析が終了し論文作成済である。

今後の研究の推進方策

2021年度は、引き続き弱毒生水痘ワクチン接種後の細胞性免疫について主に評価する。ワクチン接種の有効性について臨床情報と併せて解析するとともに、ワクチン接種の課題についても考察する。

次年度使用額が生じた理由

2020年度は、COVID-19の感染拡大による移動自粛のため十分に実験を行うことができず、研究期間を1年延長した。また海外での学会発表も見送った。次年度は、計画通りの使用が可能であると考えている。

研究成果

• [雑誌論文] Immunity and Vaccination Against Measles, Mumps, and Rubella in Adult Allogeneic Hematopoietic Stem Cell Transplant Recipients (2021)
  • 著者名/発表者名: Koji Kawamura, Hidenori Wada, Hideki Nakasone, Yu Akahoshi, Shunto Kawamura, Junko Takeshita, Nozomu Yoshino, Yukiko Misaki, Kazuki Yoshimura, Ayumi Gomyo, Masaharu Tamaki, Machiko Kusuda, Kazuaki Kameda, Miki Sato, Aki Tanihara, Shun-Ichi Kimura, Shinichi Kako, Yoshinobu Kanda
  • 雑誌名: Transplantation and Cellular Therapy 巻: - ページ: -
  • DOI: 10.1016/j.jtct.2021.02.027.
  • 査読あり