研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植後には、水痘・帯状疱疹ウイルス (varicella-zoster virus, VZV) の再活性化が比較的高頻度に起こる。本研究では同種造血幹細胞移植後に弱毒生水痘ワクチンを接種した患者のVZV特異的免疫誘導について評価し、弱毒生水痘ワクチンの有効性について検証した。前方視的試験 (UMIN000013799) として同種移植後に弱毒生水痘ワクチン接種を施行した25例を対象とした。EIA法による測定でVZV IgGはワクチン接種前後で3.8から5.2 (中央値) と上昇したものの、抗体価の上昇が全くみられない症例もあった。ワクチン接種後にVZV再活性化を起こした症例は2割程度みられたが、ワクチン接種後のVZV IgGが8.1以上の症例はワクチン接種後の再活性化がみられなかった。また、ワクチン接種前の細胞性免疫の評価において、CD4陽性T細胞数が高値の症例ほどワクチン接種後のVZV再活性化が起こりにくいことが判明した。したがって、ワクチン接種前の免疫能の回復の程度がワクチンの効果と相関することが示唆された。 また、不随研究として行った麻疹・風疹・ムンプスウイルに対する生ワクチンの有効性についても検証した。まず、同種造血幹細胞移植後に2年以上生存し、かつ再発していない135例について、各ウイルス抗体価をEIA法で経時的に測定した。移植後2年の時点で、抗体陽性率は麻疹59.3%、風疹44.4%、ムンプス17.0%であった。次に、移植後に麻疹・風疹・ムンプスに対する生ワクチンを1回接種した患者の各抗体価を測定したところ陽転化率は、それぞれ64.3%、72.2%、35.7%であった。健常人と比べてワクチン接種による抗体陽転率は低く、1回の接種では不十分であることが示された。
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