研究課題/領域番号 |
19K17935
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
今井 一男 埼玉医科大学, 医学部, 非常勤講師 (10816606)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 呼吸器感染症 / ウイルス / メタゲノム / ポータブルシーケンサー |
研究実績の概要 |
本研究「ポータブルDirect RNAシーケンスによる小児呼吸器感染症の迅速診断系の開発」では、安価なポータブルシーケンサーであるFlongleを用いて、direct RNAシーケンス技術を用いたメタゲノム診断法を開発することを目的とした。Direct RNAシーケンス技術は、逆転写や遺伝子増幅ステップを必要としないため、簡便・安価であり、逆転写・PCR増幅効率の影響のないメタゲノムシーケンスが可能な革新的方法である。 初年度においては、主に検査法の比較検証に必要な呼吸器感染症患者の検体収集、及び従来法であるランダム増幅法(Sequence-independent, single-primer amplification;SISPA法)とFlongleを組み合わせた、ウイルスのメタゲノム診断技術についての検証を行うことで、Flongleの基礎的性能評価を行った。検体収集については、インフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルスなどの一般的なウイルス罹患者の臨床検体に加え、新型コロナウイルス罹患者の臨床検体を収集することができた。SISPA法とFlongleを組み合わせたメタゲノム診断技術の検証については、本年度に収集した臨床検体を用いて検討を行った。Flongleは安価版・低アウトプットのシーケンサーであるが、SISPA法を用いてメタゲノム診断に十分なデータ量を確保することが可能であることが確認できた。本年度にパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染者の臨床検体を用いてSISPA法の検討を行っており、本技術は時代のニーズに合った実用性の高い診断法の開発に貢献できると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究に必要な臨床検体については、2019年度の研究期間におおむね収集が終わっており、予定通りの進捗状況であるといえる。本研究で開発する、direct RNAシーケンス法によるウイルス開発技術に関しては、本年度はまずは基準法となるランダム増幅法(Sequence-independent, single-primer amplification;SISPA法)とフローセルを組み合わせた、ウイルスのメタゲノム診断技術について検討した。引き続きダイレクトRNAシーケンス法によるウイルス検出法を比較する予定であったが、2019年12月より新型コロナウイルスの世界的な流行に伴い、本研究で行う診断法開発に必要であるRNA抽出試薬、逆転写酵素試薬、RT-PCR試薬、MinION及びFlongleフローセルの供給が滞った。また新型コロナウイルスの実験室感染を防ぐため、安全な患者検体の処理方法などのプロトコール作成に時間を要した。そのため、当初計画に挙げている予定よりも研究の進捗が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点において国内および国外における試薬供給状況は改善の兆しを見せている。本研究で検討する診断法開発に必要である、RNA抽出試薬、逆転写酵素試薬、RT-PCR試薬、MinION及びFlongleフローセルの早期確保を進め、研究に必要な試薬・消耗品を確保することで研究を円滑に進める必要がある。初年度で収取し、従来のSISPA法で検証を行った検体を用いて、次年度ではdirect RNAシーケンス法の基礎的検証を行い、臨床に応用可能なメタゲノム診断法へ発展させる予定である。
|