ブルーリ潰瘍は、西アフリカを中心に流行している皮膚抗酸菌感染症であり、WHOの挙げるNTDs (顧みられない熱帯病)のうちの一つである。早期に診断・治療を 行わないと広範囲の潰瘍を生じ、関節にも病変が及ぶことで永続的な機能障害を呈する。しかしながら、流行地域で実施可能な簡易診断法が存在しないため、疾 病対策が遅れている。同地域に流行する他のskin NTDsについても、同様の問題が存在している。本研究はLAMP法またはRPA法とDNAクロマトグラフィを組み合わ せた、‘どこででも誰にでも’実施可能な、BUと他のskin NTDsを同時に診断する“multiplex”な皮膚感染症簡易遺伝子診断法の確立を目的とする。本法の確立 により、誰でも実施可能な、簡便・正確な診断が可能になることで、これらの皮膚感染症に対する疾病対策が進展することが期待される。 現在までに、ブルー リ潰瘍の起因菌であるMycobacterium ulceransのIS2404を標的として、LAMP法、RPA法の開発を行った。IS2404の希釈系列、また他の複数の 細菌、抗酸菌を用い て、複数のプライマーセットを用いて検討を行ったところ、検出感度、特異度共に良好な候補プライマーを、LAMP法、RPA法共に得ることが できた。 今年度は、それらの候補プライマーを用いて、LAMP法、RPA法とDNAクロマトグラフィの組み合わせた検出系の作製、条件検討を行なった。 結果としては、通常のLAMP、RPA法と、今回作製したLAMP法+DNAクロマトグラフィ、RPA法+DNAクロマトグラフィを比較したところ、検出感度・特異度とも同等 の結果を得られた。 現在は、臨床検体を用いた検討の実施のための準備を進めている。
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