研究課題/領域番号 |
19K17938
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山口 哲央 東邦大学, 医学部, 講師 (10408239)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MRSA / CA-MRSA / plasma-biofilm / 凝固因子 / 血漿凝集素 |
研究実績の概要 |
MRSAによる血流感染症は治療抵抗性を示し難治化することも少なくない重篤な疾患である。特に近年では健常人に感染し病原性が高いと考えられている市中感染型MRSA (CA-MRSA)による血流感染症が増加しており、新たな対策が必要になってきている。MRSAによる血流感染症ではバイオフィルム(BF)が難治化に影響していると考えられているが、血漿を添加した培地を用いると、MRSA-BFが厚みを増し、起伏に富んだ構造(plasma-BF)を呈する。本研究ではCA-MRSAと院内感染型MRSA(HA-MRSA)が形成するplasma-BFの構造・機能解析を行い、保有する接着因子・病原因子との相関を比較検討することで、CA-MRSA血流感染症の重症化メカニズムの解明を試みる。 当施設において2015~2017年の間に血液培養から分離されたMRSA株を対象にゲノム解析を行う。SCCmec typing、spa typingによるタイピングと病原因子・接着因子遺伝子の保有状況から、SCCmec typeIIが2株、SCCmec typeIVが3株の計5株に分けられた。これらの株はSCCmec typeIVの方がplasma-biofilm形成能が高く、接着因子の保有状況によりさらにplasma-biofilm形成能に差が確認された。 対象菌株の遺伝子背景を比較することで、plasma-biofilm形成影響する因子として5つの候補遺伝子を見出している。現在、この5つの遺伝子に関してpKOR1プラスミドを用いたknock out株の作成を進めている。順次、動物実験による病原性の変化を確認しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
臨床株のplasma-BF形性能の評価および、責任遺伝子KO株の作成は順調に進んでいるが、遺伝子KO株を多数作成する必要があり、時間を要している。また、新型コロナウイルス 感染症の流行に伴い、マウスモデルを用いた検討は現在進められていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き候補遺伝子KO株の作成を行い、plasma-biofilm形成能の評価およびマウスモデルを用いた病原性の変化を検討する。また、plasma-biofilm形成過程において様々な薬剤を作用させ、その形成阻害効果を確認する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
knock out株作成を優先し、臨床株の次世代シーケンサーを用いた解析が遅れているため。次年度に持ち越しとなった。2020年度には、次世代シーケンサーを用いた臨床株の全ゲノム解析により、より詳細なタイピングを行い、新たな病原因子遺伝子の抽出を試みる。各種KO株の作成を進め、plasma-BF形性能を評価し、マウスモデルを用いて病原性への影響を検討する。
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