研究実績の概要 |
インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)は、国内の予防接種に用いられるスプリットワクチンの主要抗原タンパク質である。A/H3N2(香港型)インフルエンザウイルスのHAは主要抗原部位(major antigenic site: MAS)のアスパラギン結合型(N型)糖鎖付加・欠損を伴う遺伝子変異が生じやすく、ワクチン株と市中流行株との抗原相同性不一致の一因であると考えられる。本研究は、香港型ウイルスのHA-MASに潜在する「糖鎖付加および糖鎖欠損による抗原性の多様化」がウイルス感染に対する宿主応答やエピデミックな流行に及ぼす意義を明らかにすることを目的としている。本年度は以下の成績を得た。 ① Global initiative on sharing all influenza data (GISAID)に登録されている、直近5シーズンに国内で流行した香港型のHA塩基配列情報を分析し、HA-MASのN型糖鎖プロファイル(アミノ酸ドメイン:#122, #126, #133, #144, #158および#165の糖鎖の付加と欠損による組合せ)を解析した。 ② 様々な糖鎖プロファイルのHA遺伝子を、mutagenesis法を用いて作製し、WSN株を骨格としたリバースジェネティクス(RG)法により組換えウイルスを作製した。 ③ 組換えウイルスの感染増殖能を赤血球凝集試験およびプラークアッセイで評価し、生体への感受性をC57BL/6マウスへの感染実験により検証した。
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