研究課題/領域番号 |
19K17947
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
佐野 芳 国立感染症研究所, 感染病理部, 研究員 (40832770)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体 / インフルエンザウイルス / ワクチン |
研究実績の概要 |
経鼻不活化インフルエンザワクチンおよび注射型不活化インフルエンザワクチンの接種者由来形質芽細胞から抽出した抗体遺伝子をもとに作製したモノクローナルIgG抗体の、インフルエンザウイルス抗原であるヘマグルチニン(HA)への結合活性をELISAにより評価した。その結果、経鼻ワクチン接種群と皮下ワクチン接種群それぞれにおいて誘導された抗体群間で、HAへの結合活性プロファイルに違いが認められることが明らかとなった。以上の研究結果は第23回日本ワクチン学会学術集会(2020年12月1日、東京都、2-1-04)において発表を行った。ノイラミニダーゼ(NA)への結合活性に関しては、解析に使用する組換え分泌型NAタンパク質が哺乳類培養細胞系による作製が不可能であったた、現在は昆虫細胞培養系による作製系を現在確立している最中であり、未実施である。 上記のスクリーニング実験の結果、HAへの結合活性が認められた抗体クローンのうち代表的なものについては、IgG抗体、単量体型・多量体型IgA抗体を作製し、HI(Hemagglutination Inhibition)試験およびウイルス中和試験を実施し、抗体のより詳細な機能解析を行った。 インフルエンザワクチンで誘導された抗体の遺伝子レパトア解析については、皮下及び経鼻インフルエンザワクチン接種者の末梢血単核球検体を用いて、皮下及び経鼻インフルエンザワクチン接種者の末梢血単核球検体から抽出したRNAを用いた抗体のリアルタイムRT-PCRを実施し、健康成人でのワクチン接種前後における末梢血中の抗体遺伝子発現パターンに関するバルクのプロファイルを得た。現在は、抗体の遺伝子レパトアの比較解析系の立ち上げを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の進捗には、抗体遺伝子レパトア解析等の複雑な実験系を新たに立ち上げることや、培養細胞系において作製が困難なウイルス抗原タンパク質を作製することが必須であり、それゆえ想定していたよりも多くの時間とエフォートが必要となってしまったため。
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今後の研究の推進方策 |
組換え分泌型NAタンパク質の作製系を確立し、経鼻不活化インフルエンザワクチンおよび注射型不活化インフルエンザワクチンの接種者由来形質芽細胞から抽出した抗体遺伝子をもとに作製したモノクローナルIgG抗体のNAへの結合活性を評価する。その結果得られたNA結合抗体クローンの詳細な機能解析を実施する。これにより、ワクチンで誘導された抗体のモノクローナルレベルでの抗体機能データセットの完成を目指す。 インフルエンザワクチンで誘導された抗体の遺伝子レパトア解析については、皮下及び経鼻インフルエンザワクチン接種者の末梢血単核球検体を用いて、皮下及び経鼻インフルエンザワクチン接種者の末梢血単核球検体から抽出したRNAの網羅的なシークエンス解析を実施し、抗体遺伝子レパトアデータを取得する。得られたデータはワクチンで誘導された抗体のモノクローナルレベルでの抗体機能データセットを合わせて解析を実施する。 また、経鼻ワクチン接種者の鼻腔粘膜上に誘導されたIgA抗体の解析系について、その立ち上げを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入を予定していた実験試薬が国外からの輸入品であり、年度内に納品が不可能であったため2019年度中の購入を断念した。次年度使用額は上記試薬を購入するために使用する予定である。
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