研究実績の概要 |
これまでに申請者らは3T3-L1前駆脂肪細胞を用いて、splicing factor proline/glutamine-rich (Sfpq)にかかわる転写因子群について検討を行ってきた。 Sfpqをノックダウンすると白色脂肪細胞分化が抑制されることが判明している。electroporation法によって特異的small interfering RNAを3T3-L1前駆脂肪細胞に導入した。その後白色脂肪細胞への分化を誘導し、白色脂肪細胞分化早期あるいは分化後期の転写因子群において、Sfpqのノックダウンによる変化を検討した。白色脂肪細胞分化早期に誘導される因子群としてCebpb, Cebpd, Krox20などが知られており、Sfpqをノックダウンすることでこれらの因子群の遺伝子発現が減少することが定量的PCRで示された。また、分化後期に誘導される因子であるPparg, Cebpa, Fabp4についても遺伝子発現が抑制された。これまでの成果についてまとめた論文を2022年6月に発表した。 既報ではSfpqとmRNAスプライシングやそれにかかわる因子群との連携についても報告されていることから、Sfpqをノックダウンした場合のエクソンの変化を検討することとした。siRNAによりSfpqノックダウンを行い、得られた検体についてRNAシークエンス解析を実施した。コントロールと比較して、スプライシングに変化のある複数の脂肪代謝に関連する因子を抽出した。Hacd1やApol6といった分子が候補として挙がっている。これらは脂肪細胞分化や脂質代謝に関連することはすでに知られており、さらにそのスプライシングバリアントによって分子生物学的な機能の変化も報告されている。今後はそのスプライシングの変化や決定にSfpqがどの様に関与するか、検討する予定である。
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