エクソソームの放出は低酸素下で促進されることが報告されており、本研究では、肥満の脂肪組織で生じる低酸素ストレスに起因して脂肪組織から放出されるエクソソームに着目し、エクソソームを介した脂肪組織ー肝臓連関がNASHの病態に与える影響を検討した。 まず、高脂肪食を給餌した肥満マウスの血清からエクソソームを回収し、次世代シークエンサーを用いてエクソソームが内包するmiRNA(エクソソームmiRNA)を網羅的に解析したところ、117種類のエクソソームmiRNAが通常食を給餌した対照マウスに比して増加していることを見出した。高脂肪食を給餌した肥満マウスで、脂肪組織特異的にHIF-1αを後天的に欠損させて同様の検討を行ったところ、40種類のエクソソームmiRNAがHIF-1αを欠損しない対照マウスに比して減少していた。これらのうち、共通するエクソソームmiRNAは17種類で、肥満でHIF-1α依存的に脂肪組織から放出されるエクソソームmiRNAの候補として絞り込んだ。 次に、高脂肪食を給餌した肥満マウスで脂肪組織特異的にHIF-1αを後天的に欠損させたときの肝臓の遺伝子発現を次世代シークエンサーを用いて網羅的に解析した。減少した遺伝子は131種類、増加した遺伝子は73種類で、増加した遺伝子にはインターフェロン応答に関連するものが多く含まれていた。一方、脂肪組織特異的にHIF-1αを欠損させた後に高脂肪食の給餌を続け、肝臓を解析したところ、脂肪酸代謝、炎症、線維化の変化は乏しく、HIF-1α依存的に脂肪組織から放出されるエクソソームmiRNAのNASHの病態に与える影響は限定的だった。
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