研究課題
トロンボモジュリン(TM)は、血管内でトロンビンと結合しプロテインCを活性化プロテインC(APC)に変換することで抗凝固作用を有するが、近年、細胞保護作用を有することが注目されている。細胞傷害因子であるHigh-mobility Group Box 1 protein (HMGB1)を分解することや、アポトーシスを抑制することが機序として想定されている。またTMはG-coupled protein receptor 15(GPR15)を介して血管内皮細胞を保護することが報告された。β細胞のアポトーシスは、インスリン分泌の低下につながり、1型、2型いずれの病型の糖尿病においても病態進展の主要な機序であると考えられている。TMは膵β細胞のアポトーシスを抑制することにより糖尿病の進展を抑制する可能性がある。TMが膵β細胞に対して抗アポトーシス作用を有するかを検討した。マウス膵β細胞株MIN6をTMによる前処置の有無で培養し、ストレプトゾトシン(STZ)で刺激した後、AnnexinⅤ、Propidium iodide (PI)を用いたフローサイトメトリーによりアポトーシスを検出した。TM処置によりSTZで誘発されるアポトーシスが有意に抑制された。
2: おおむね順調に進展している
in vitro実験では当初の仮説通り、TMが膵β細胞に対して抗アポトーシス作用を有することが示された。TMの抗アポトーシス作用のメカニズムについては膵β細胞での検討が不十分であるが、ポドサイトを用いた実験において抗アポトーシス作用、関連する受容体や細胞内シグナルまで明らかにすることができた。膵β細胞においても共通の経路を想定しており、今後、詳細なメカニズムの検討を行う。
in vitro実験で、TMが膵β細胞に対して抗アポトーシス作用を有することが示唆された。またポドサイトを用いたin vitro実験において、TMはG-coupled protein receptor 15(GPR15)/Akt経路を介して抗アポトーシス作用を発揮することを証明できたため、膵β細胞でも共通の経路について検討を行う予定である。加えて、STZ誘発糖尿病マウスモデルを用いてin vivo実験でTMの効果を検証したいと考えている。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
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