研究課題
肥満2型糖尿病では脂肪組織のインスリン抵抗性が病態形成に重要な役割を果たすが、そのメカニズムの詳細は明らかでない。私は飢餓状態もしくは肥満糖尿病状態で脂肪細胞からのSDF-1産生が増加し、脂肪細胞自身にautocrineに作用し、インスリン感受性を低下させ、糖取り込みを抑制する因子であることを明らかにした(Shin, et al. Diabetes 2018)。SDF-1は全身の様々な臓器で発現しており、インスリン標的臓器である骨格筋や肝臓にも発現する。Tamoxifen誘導性に全身でCreを発現するUBC-CreERT2マウスを用い、全身SDF-1欠損マウスを作成し、肝臓や骨格筋を含む全身のインスリン感受性や糖代謝への影響を解析している。また、SDF-1は前駆脂肪細胞にも発現していること、脂肪細胞への分化過程にSDF-1が作用することを見出しつつあり、Tamoxifen誘導性に前駆細胞特異的にCreを発現するPDGFRa-CreERT2マウスを用い、前駆細胞特異的SDF-1欠損マウスを作成し、脂肪細胞分化や脂肪蓄積への影響を解析している(解析中)。さらにSDF-1が細胞自律的にインスリン感受性を抑制することから着想を得て、SDF-1と反対にインスリン感受性を促進する因子が存在する可能性を考え、データベースを用いたスクリーニングを行った。その結果、摂食状態で発現量が増加する脂肪細胞由来分泌因子としてTGFβを同定した。これまでTGFβは肥満 病態の脂肪組織で繊維化を誘導する因子として認識されていたが、栄養状態の変化に応じた生理的な作用は知られていなかった。本研究では摂食時に脂肪細胞におけるTGFβの発現量が増加し、脂肪細胞にautocrine に作用することで、Lipogenesisを誘導し脂肪を蓄積することを見出した(Shin, et al. 2022、JBC)。
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Journal of Biological Chemistry
巻: VOLUME 298, ISSUE 4, 101748 ページ: 101748
10.1016/j.jbc.2022.101748