研究課題
2型糖尿病発症予防では、糖尿病高リスク状態での適切な介入が望まれる。しかしながら、健診標準項目である空腹時血糖を用いた糖尿病高リスク状態(impaired fasting glucose: IFG)の基準値は、日本などが110㎎/dl-、アメリカが100㎎/dl-と世界的に統一されていない。本研究では多様な時系列データの状態推定に用いられる隠れマルコフモデルを健診データに適用して、糖尿病高リスク状態の推定を行うことを目的とした。「正常状態(潜在状態)⇔高リスク状態(潜在状態)→糖尿病」の3状態からなる隠れマルコフモデルを健診の空腹時血糖データに適応して2型糖尿病発症モデルを構築し、以下の2点の知見を得た。①構築したモデルでは、高リスク状態の分布の平均が約110㎎/dlであり、糖尿病発症予防の観点からは高リスク状態の基準値自体は110㎎/dl以下にするのが望ましい。②高リスク状態→正常状態の遷移確率が0.2%/年と、いったん高リスク状態になると正常状態に戻らず、高リスク状態が継続することが示された。高リスク状態への継続的な介入が必要なことや、さらに遡って正常から高リスク状態への移行を予防するための介入(ポピュレーションアプローチ)が重要になってくることが考えられた。この結果と知見は学会で発表を行い、論文にまとめ、投稿中である。また、その分析過程で得た「脂肪肝と糖尿病発症の知見」(Narisada2021)および、「特定保健指導基準の効果」(Narisada2022)については論文化した。「高リスクが正常化しない」という知見を、インスリン値の動きなども考慮するため、インスリン測定を計画したが、新型コロナウイルス感染拡大にも影響され連携がスムーズにいかず、今後の課題となった。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件)
Diabetes Research and Clinical Practice
巻: 189 ページ: 109946~109946
10.1016/j.diabres.2022.109946