研究課題/領域番号 |
19K17972
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部) |
研究代表者 |
吉井 陽子 独立行政法人国立病院機構(呉医療センター臨床研究部), その他部局等, その他 (00795320)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 原発性アルドステロン症 / 腫瘍増殖 / アルドステロン / RXR |
研究実績の概要 |
1.RXR関連因子のアルドステロン産生腺腫 (APA) における発現解析 DNAメチル化ビーズアレイ解析において,ATP1A1変異をもつAPAにおいて,RXR関連因子のプロモーター領域が広範囲に低メチル化していることがわかった.さらに,既存のトランスクリプトーム解析から,その遺伝子発現量が増加していることがわかった.APA標本を用いたqPCR解析では,KCNJ5遺伝子変異を有するAPAや、遺伝子変異がみられないAPAと比較して,ATP1A1遺伝子変異を有するAPAにおいて,RXR関連因子の発現量は有意に高値を示した。さらに,免疫組織化学の検討でも,ATP1A1遺伝子変異を有するAPAにおいて,RXR関連因子は明らかに高発現を示した. 2.ATP1A1変異を導入した副腎皮質癌細胞株における機能解析 (In vitro解析) ATP1A1 L104R遺伝子変異を導入したHAC-15細胞(ATP1A1mut-HAC15 細胞)および空ベクターを導入したHAC15(コントロール細胞)を通常血清下で培養した結果,ATP1A1mut-HAC15 細胞はコントロール細胞に比較し,細胞数やDNA量が遺伝子導入3日目から有意に増加した.さらに,ATP1A1mut-HAC15 細胞では,細胞数依存性に,アルドステロン値もコントロール細胞に比較し有意に上昇した. 上述の2群の細胞において,低濃度血清(0.1%血清)下で培養したが,この条件では,遺伝子導入5日目までの観察で,両群に細胞増殖速度に変化がみられなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の初期計画で,以下の研究計画の立案をおこなった. 1. RXR関連因子の遺伝子発現調節を行った細胞株における網羅的遺伝子発現調節 ATP1A1変異を導入した副腎皮質癌細胞株 (HAC15) において,RXR関連因子が高発現していることを示し,また,アルドステロン産生腺腫においても,qPCRや免疫組織化学で,同因子が高発現していることを得た. 2. 遺伝子発現調節をおこなった細胞株の機能解析 ATP1A1変異を導入したHAC15の機能解析を行った.ATP1A1変異が腫瘍増殖を促進すると仮説していたが,昨年度の結果に示すように,ATP1A1変異を導入したHAC15において,細胞数やDNA量がATP1A1変異を導入したHAC15において増加していることを示すことができた.この結果は,申請者がたてた仮説通りの結果であり,順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画に準じて,以下の研究を予定する. 1. RXR関連因子の遺伝子発現調節を行った副腎皮質癌細胞株 (HAC15) の機能解析 RXR関連因子の遺伝子発現調節をおこなったHAC15におけるRNA-seq解析から,腫瘍増殖にRXRを介し転写調節を受けた遺伝子群を抽出する.腫瘍増殖に関わるパスウェイを同定し,RXR関連因子以外の創薬標的分子を探索する.同定した分子を,さらに,遺伝子発現調節あるいは阻害薬等を用いて,腫瘍増殖に与える影響を検討する. 2. RXR関連因子およびRXRの複合体解析 RXRは,核内受容体であり,申請者らが同定している因子Xと共役し機能し,腫瘍増殖に関わっていると考えられる.したがって,RXRと共役してることを示すため,免疫沈降法により,RXRと結合していることを確認し,RXR共役因子のRXR結合部位の遺伝子変異をもつプラスミドを作製し,変異型RXR共役因子は,腫瘍増殖作用をもたないことを証明する.
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