原発性アルドステロン症はアルドステロン産生腺腫 (APA) と特発性アルドステロン症に分類される.APAは細胞膜のイオンチャネルやポンプの体細胞変異で発症することがわかっており,本研究ではATP1A1変異APAの発症機構の解析を行った. ATP1A1変異をもつAPAにおける細胞増殖機構の解明を目的として,RXR関連因子であるvitamin D receptor (VDR) を候補因子として解析を行った.ATP1A1変異APAにおけるNa/K-ATPase(NKA)発現は,非機能性副腎皮質腺腫やKCNJ5変異APAより有意に多かった.ATP1A1 L104R遺伝子変異を導入したHAC15細胞 (ATP1A1mut-HAC15細胞) では空ベクターを導入したHAC15 (コントロール細胞) と比較し細胞数やDNA量が有意に増加した.低濃度ウアバインは,ATP1A1mut-HAC15細胞の細胞増殖を促進した.また,ATP1A1mut-HAC15細胞はSrcのリン酸化を誘導し,低濃度ウアバイン投与によりさらにSrcリン酸化が誘導された.活性型ビタミンD3製剤であるカルシトリオールをATP1A1mut-HAC15細胞及びコントロール細胞に投与したが,両群において細胞増殖の促進は認めなかった.低血清培地においてATP1A1mut-HAC15細胞はコントロール細胞と比較して細胞増殖は促進されなかったが,カルシトリオール投与しても両群において細胞増殖は促進されなかった.以上より,DNA低メチル化によって誘導されるVDR発現はATP1A1変異APAにおいて細胞増殖に不可欠であることが示された.また,NKA刺激がATP1A1変異APAの増殖に関与することが示唆された.
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