甲状腺ホルモンが肝臓、骨格筋、褐色脂肪などでオートファジーを促進し有益な効果をもたらすことが知られているため、腎臓における関連する作用の証明にこれまで取り組んできた。T3を投与した通常のマウスないし肥満症モデルマウス、あるいは慢性的な甲状腺機能亢進状態のモデルマウスなどを用い、オートファジーのマーカーであるLC3-IIやp62の変化を観察したが、統計学的に有意な差を検出できなかった。さらに、培養細胞を用いた実験も実施したが、期待された結果は得られなかった。 一方で、臨床データの解析では、血中の甲状腺ホルモン濃度と腎機能との関係を多変量解析で調べ、新たに経口抗凝固薬の内服状態がFT4に影響を与える因子として検出された。これまで降圧剤、脂質異常症治療薬、経口血糖降下薬など他の種類の薬剤も、甲状腺ホルモンに影響を与えることが知られている。健康診断のデータを基に、これらの薬剤が甲状腺ホルモンに与える影響を傾向スコア分析を用いて検討したところ、一部の経口血糖降下薬が遊離T4を上昇させることが示された。しかし、抗凝固薬と比較するとその影響は限定的であり、抗凝固薬によるフィブリンを介した干渉の臨床的な意義は高いと推察された。なお、TSHに対する降圧剤、脂質異常症治療薬、経口血糖降下薬の影響については、統計学的な有意差を検出できなかった。 臨床データーの解析と並行し、抗甲状腺薬プロピオチオウラシルを投与したマウスについての解析も再開している。
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