日内変動をもつホルモンを過剰産生する下垂体腫瘍では「分泌リズムの異常・フィードバック機構の破綻」を必ず伴う。本研究は下垂体腫瘍細胞における分泌リズムの異常をきたすメカニズムおよび概日リズムと薬剤作用機序との関連を明らかにすることで、有効な下垂体腫瘍に対する内科的治療の開発を目指すことを目的とした。前年度の研究から、マウスコルチコトロープ細胞AtT20においてOrexin AはCRH刺激下ではPOMC mRNA発現を増強したがCRH非刺激下ではPOMC mRNA発現へ影響を与えなかった。この機序について検討し、Orexin A添加によりCRH受容体発現が増強することを見出した。またPOMC転写抑制に働くBMP-4との相互作用に関する検討では、Orexin A添加によるBMP-Smadシグナル減弱は抑制性Smad発現増強を介することを明らかにした。これらの結果からオレキシンは下垂体前葉においてACTH分泌調節に関与している可能性が示唆された。 また概日リズムと下垂体ホルモン調節において関連する因子として摂食調節と自律神経との関与を検討するために、摂食によるインスリン分泌に寄与するインクレチンと交感神経系の活性化を示すカテコラミンとの関係にも着目して研究を進めた。ラット褐色細胞腫細胞PC12においてGIPはカテコラミン合成を増強したがGLP-1は影響を与えなかった。またカテコラミン合成促進に働くステロイドとの相互作用において、GIPはステロイド受容体発現を増強することでカテコラミン合成酵素であるTH mRNA発現を増強したが、GLP-1はステロイド受容体発現、TH mRNA発現ともに影響がなかった。カテコラミン合成抑制に働くBMP-4との相互作用に関する検討では、GIPはBMP-4によるTH転写抑制を減弱し、BMP-Smadシグナルも減弱させた。現在この機序について検討中である。
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