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2022 年度 実施状況報告書

高次脳機能評価に基づく成長ホルモン補充療法の効果判定と補充療法適応指針の作成

研究課題

研究課題/領域番号 19K17987
研究機関広島大学

研究代表者

木下 康之  広島大学, 医系科学研究科(医), 助教 (90750993)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2024-03-31
キーワード成長ホルモン補充療法 / 高次脳機能 / 成長ホルモン分泌不全症
研究実績の概要

2020年1月から2022年4月の期間において、合計41患者・65回計測分のデータを収集することができた。成長ホルモン(GH)補充を行った患者は3患者から9患者へと増加した。1年間を通して補充を継続しデータ収集が完了した4人について解析したところ、昨年同様注意力の改善が認められている。また、手術前GHDを認めていた患者も術後に指先の微細な運動能力の改善を認めた。引き続き、症例の蓄積が必要である。
またJoust Tapは被験者の微細な指の動きのデータも収集可能であり、中間解析において指先の微細な動きの指標であるtap intervalとIGF-1 (SD score)において相関性があることが示された。更に今年度の解析において甲状腺ホルモンの関連が示された。引き続きsGHDを有する患者だけではなく、他のPit-NETの症例においても同意を得ることが出来た患者から順次測定を行い、データの蓄積を継続している。
Just TouchやJust Tapのデータは集中力や注意力とも相関することが広島大学工学研究科の研究で報告されているため、工学研究科と連携を取りながら解析をすすめている。現在広島大学工学研究科とのカンファレンスはCOVID-19の影響でZoomを利用したリモートカンファレンス形式で開催し、随時方法の確認とデータ報告を行っている。
本研究に関連し、今年度はgerminomaによるsGHDに対するGH補充療法について(Pituitary 2022:25:854-860.)視索から視床下部浮腫を有するBRAF遺伝子変異陽性頭蓋咽頭腫の下垂体ホルモンについて(Jpn J Clin Oncol 2023:53:378-385.)、視神経障害を来した下垂体腺腫とホルモンについて(Neurosurg Rev 2022:46:4)、ラトケ嚢胞とホルモン機能(J Neurosurg 2022:138:1426-1432.)の計4本の論文を作成、採択された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

COVID-19蔓延の影響による経鼻手術が減少したが、回復し、補充対象であったsGHD患者がTSS術後に改善した症例も複数例認め、研究同意を頂けた患者に対して検査を予定している。
一方で頭蓋咽頭腫の患者や下垂体germinomaについて、引き続き多数の施設からご紹介頂き、患者の治療を行った。Pit-NETも含め下垂体ホルモン値とウェアラブルデバイスによる計測データは少しずつではあるが、確実にデータを蓄積している。
本研究の内、補充対象患者は補充療法開始から1年にわたるデータ収集という時間を必要とする研究である。また成長ホルモン補充療法は腫瘍再発のリスクを上昇させるという報告も散見するため、悪性腫瘍の場合は念のため治療後2年の経過観察期間の後に成長ホルモン補充療法を行うため、長期的に継続したデータ収集が必要となる。COVID19蔓延の影響で当初の計画から症例の蓄積が遅れているが、昨年~本年までで症例数は着実に増えており、いずれ解析に耐えうる数になると考えている。

今後の研究の推進方策

新たに補充療法に加わったラトケ嚢胞2名とPit-NETの患者2名、下垂体卒中後の患者1名を現在フォロー中である。前述の様に、術前sGHDを有するも術3ヶ月後にホルモン負荷試験で改善を示した患者がいる。彼らについて順次、データ計測を行い、その変化値を収集する予定である。収集したデータについて前述の通り広島大学工学研究科と連携し、順次データの解析をすすめていく。データの収集には当初の計画より時間を要しているが、研究は計画通りに進んでいる。
更に、WHOの新たな分類では転写因子に基づくinvasiveな腫瘍が特記されている。術前にそれら二つを鑑別することは未だ困難であるが、invasiveな側面をもつ腫瘍の場合、ホルモン分泌機能にも術前から障害を来す可能性がある。従って、本研究では術前ホルモン分泌機能とウェアラブルデバイスの測定データに加え、新たに病理学による免疫組織診断をデータに追加した。PIT-1染色とGATA3染色並びにT-PIT染色を評価し、これからの解析項目に加える予定である。

次年度使用額が生じた理由

前述の通り、COVID-19に蔓延の影響による学会参加の旅費が少ないことがある。データはある程度そろってきたため、データ解析として、工学部の教員と直接コンタクトを取り打ち合わせを予定しているため、その交通費、論文作成費用、学会発表の旅費に使用する予定である。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Optic tract edema in craniopharyngioma as a predictor of BRAFV600E mutation presence2023

    • 著者名/発表者名
      Taguchi Akira、Kinoshita Yasuyuki、Kojima Masato、Amatya Vishwa J、Tominaga Atsushi、Takeshima Yukio、Arita Kazunori、Hiyama Eiso、Yamasaki Fumiyuki、Horie Nobutaka
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Clinical Oncology

      巻: 53 ページ: 378~385

    • DOI

      10.1093/jjco/hyad003

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Usefulness of critical flicker fusion frequency measurement and its laterality for evaluating compressive optic neuropathy due to pituitary neuroendocrine tumors2022

    • 著者名/発表者名
      Taguchi Akira、Kinoshita Yasuyuki、Tokumo Kana、Tominaga Atsushi、Kiuchi Yoshiaki、Yamasaki Fumiyuki、Horie Nobutaka
    • 雑誌名

      Neurosurgical Review

      巻: 46 ページ: 4

    • DOI

      10.1007/s10143-022-01915-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Natural course of Rathke’s cleft cysts and risk factors for progression2022

    • 著者名/発表者名
      Kinoshita Yasuyuki、Taguchi Akira、Yamasaki Fumiyuki、Tominaga Atsushi、Arita Kazunori、Horie Nobutaka
    • 雑誌名

      Journal of Neurosurgery

      巻: 138 ページ: 1~7

    • DOI

      10.3171/2022.7.JNS22716

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Influence of growth hormone therapy on germinoma survivors2022

    • 著者名/発表者名
      Kinoshita Yasuyuki、Yamasaki Fumiyuki、Taguchi Akira、Takayasu Takeshi、Yonezawa Ushio、Tominaga Atsushi、Arita Kazunori、Okada Satoshi、Horie Nobutaka、Sugiyama Kazuhiko
    • 雑誌名

      Pituitary

      巻: 25 ページ: 854~860

    • DOI

      10.1007/s11102-022-01273-5

    • 査読あり
  • [学会発表] Pit-NETの早期発見を目的としたPit-NETの早期発見を目的とした 中心フリッカー値左右差評価の有用性2022

    • 著者名/発表者名
      田口 慧,木下 康之,徳毛 花菜,富永 篤,堀江 信貴
    • 学会等名
      一般社団法人日本脳神経外科学会 第81回学術総会
  • [学会発表] 髄液鼻漏で発症したPRL産生pituitary neuroendocrine tumor2022

    • 著者名/発表者名
      田口 慧, 木下 康之, Vishwa Jeet Amatya, 武島幸男, 堀江信貴
    • 学会等名
      第23回日本内分泌学会中国支部学術集会
  • [学会発表] 内視鏡下経鼻経蝶形骨洞手術後の蝶形骨洞炎2022

    • 著者名/発表者名
      田口 慧,木下 康之,堀江 信貴
    • 学会等名
      第29回一般社団法人日本神経内視鏡学会総会
  • [学会発表] 頭蓋咽頭腫における視索浮腫はBRAF遺伝子変異の予測因子になりうるか2022

    • 著者名/発表者名
      田口 慧, 木下康之, 兒島正人, Vishwa Jeet Amatya,富永 篤, 武島幸男, 檜山英三, 有田和徳, 山崎文之, 堀江信貴
    • 学会等名
      第33回一般社団法人日本間脳下垂体腫瘍学会
  • [学会発表] Germinoma治療後のGH補充療法が腫瘍再発に与える影響2022

    • 著者名/発表者名
      木下康之、山崎文之、田口 慧、高安武志、高野元気、米澤 潮、杉山一彦、堀江信貴
    • 学会等名
      第95回 日本内分泌学会学術総会
  • [学会発表] 経鼻内視鏡手術と周術期管理の基本2022

    • 著者名/発表者名
      木下康之
    • 学会等名
      第42回 日本脳神経外科コングレス総会
    • 招待講演

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公開日: 2023-12-25  

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