研究課題/領域番号 |
19K17988
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂本 昌平 九州大学, 大学病院, 特別教員 (90761502)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非アルコール性脂肪肝炎 / VNUT / マクロファージ / プリン作動性化学伝達 |
研究実績の概要 |
ATP分泌刺激試験として、野生型マウス由来の初代培養肝細胞(MPH)への高濃度グルコース負荷およびアポトーシス刺激によりATPの分泌が促進されたが、VNUT欠損マウス由来のMPHではATP分泌が低下していた。 マウスより採取した骨髄前駆細胞にL929細胞培養上清を添加・培養し、骨髄由来マクロファージ(BMDM)に分化誘導し、実験に用いた。野生型BMDMは高濃度グルコース負荷によりATP分泌が促進されたが、VNUT欠損BMDMではATP分泌が有意に低下していた。BMDMへのLPS添加により、BMDMに占める活性化マクロファージの割合は有意に上昇し、さらにATP濃度依存性にマクロファージ増加がみられたが、野生型およびVNUT欠損BMDM間で有意な変化は認めなかった。次に培養液中に蛍光ビーズを添加し、ビーズを貪食した細胞数を蛍光顕微鏡を用いて計測した。野生型ではLPS刺激によりビーズを貪食した細胞は減少し、さらにATP濃度依存性に貪食細胞数は減少傾向となった。一方、VNUT欠損BMDMでは野生型と比べ貪食細胞数の増加傾向がみられた。以上の細胞実験の結果から、高濃度グルコースおよびアポトーシスにより初代培養肝細胞およびマクロファージからVNUTを介して分泌されたATPはM1マクロファージへの分化を誘導し、貪食作用を減じ、炎症を持続させている可能性が示唆された。ただし、貪食実験は試行回数が少ないため、引き続き検討が必要と考えられた。 また個体レベルの評価のため、ウエスタンダイエット(WD)摂餌12週間後に肝臓を採取し、組織学的評価を行った。野生型およびVNUT欠損マウスのF4/80陽性細胞数に有意な変化は認めなかった。しかしながら、ALT値に有意な差は認めず、HE染色では肝組織での炎症所見が乏しかったため、炎症の評価はWD摂餌12週では困難であり、引き続き検討が必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は骨髄由来マクロファージを用いた細胞実験の一部を行い、個体レベルではウエスタンダイエット摂餌による肝臓における炎症の評価を行った。ウエスタンダイエットでの炎症惹起に12週では炎症所見が乏しく評価が難しかったため、より長期のウエスタンダイエット摂餌を行い炎症の評価を行う。
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今後の研究の推進方策 |
細胞レベルではATP分泌刺激の探索として脂肪酸を用いて評価を行う。さらに、BMDMを用いてマクロファージの遊走能および初代培養肝細胞との共培養による貪食能の評価を行う。個体レベルではウエスタンダイエット摂餌期間をより長期にして肝臓の評価を行う。本報告書作成時で23週摂餌しており、24週時点で評価を行う。 また、VNUT阻害薬であるクロドロネートを用いた細胞・個体レベルでの実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においてはその他の研究資金も活用することで研究実施が可能であった。次年度も試薬等の物品費およびマウス管理費等を中心に使用する予定である。
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