研究課題/領域番号 |
19K17991
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
海老原 千尋 自治医科大学, 医学部, 客員研究員 (90790915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脂肪萎縮症 / セイピン |
研究実績の概要 |
BSCL2は先天性全身性脂肪萎縮症の原因遺伝子として2001年に同定され、わが国では申請者らのグループが初めてBSCL2遺伝子異常症を報告した。BSCL2がコードするセイピンは398アミノ酸からなる2回膜貫通型のタンパク質と考えられているが、既知タンパク質と相同性を認めず、その生理的意義については不明である。 申請者らはこれまでにセイピンノックアウト(SKO)ラットを作製し、脂肪組織の発生・分化にセイピンが必要不可欠であることを証明した。SKOラットでは全身の脂肪組織が消失し、ヒトのBSCL2遺伝子異常症と同様に、インスリン抵抗性糖尿病や高中性脂肪血症、脂肪肝を呈し、脂肪組織の発生におけるセイピンの重要性が直接的に証明された。SKOラットの解析により、脂肪細胞の発生・分化におけるセイピンの重要性を証明するとともに、SKOラットが優れたBSCL2遺伝子異常症モデル動物であることを示してきた。しかし、細胞あるいは分子レベルでのセイピンの役割については未だ不明である。そこで本研究では、SKOラットより調整した初代培養ラット皮膚繊維芽細胞を用いた脂肪細胞分化誘導実験系により、脂肪細胞の分化過程におけるセイピンの分子生物学的意義の解明を目指すこととした。本研究ではSKOラット由来の初代培養ラット皮膚繊維芽細胞を用いた脂肪細胞分化誘導実験系により、脂肪細胞の分化過程におけるセイピンの役割を明らかにする。 脂肪細胞分化におけるセイピンの分子生物学的意義の解明は、先天性全身性脂肪萎縮症の治療に結びつくだけではなく、脂肪細胞研究の発展に広く寄与することが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らはすでに初代培養ラット皮膚線維芽細胞を用いた脂肪細胞分化誘導実験系を確立した。 この実験系を用いて、SKOラット由来の細胞では脂肪細胞分化が著しく抑制されていること、PPARγアゴニスト(ピオグリタゾン)によりSKOラット由来の細胞においても早期の脂肪細胞分化過程は促進されるが、後期分化過程はPPARγアゴニスト存在下でも抑制されることを見出した。 さらに、脂肪細胞分化の後期課程においてSKOラット由来細胞ではHSL(hormone sensitive lipase)などの脂肪分解酵素が活性化されていることも見出した。すなわち、セイピンは脂肪細胞分化の前期過程と後期課程で異なる役割があり、前期課程ではPPARγの活性化に働き、後期課程では脂肪分解抑制に働くと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、セイピンは脂肪細胞分化の前期過程と後期課程で異なる役割があり、前期課程ではPPARγの活性化に働き、後期課程では脂肪分解抑制に働くという仮説が立てられた。 この仮説に基づき、今後、SKOラット由来細胞に対しPPARγアンタゴニストやHSL阻害薬、ATGL阻害薬などの投与を行い脂肪細胞分化についての更なる検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で2020年3月に行く予定であった海外学会が中止となり、計上していたよりも研究費の使用が少なったからと考えられる。 次年度では、今年4月から動物実験施設の管理料等が大幅に値上げしたこともあり、飼育費などの動物管理費に使用出来ればと考えています。
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