研究課題/領域番号 |
19K17997
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宗像 佑一郎 東北大学, 大学病院, 助教 (60747070)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | インスリン分泌 / 糖尿病 / 嗅覚受容体 / 膵β細胞 |
研究実績の概要 |
嗅覚受容体は、7回膜貫通のG蛋白共役型受容体であり、嗅上皮に発現し、脂肪酸などの食物の匂いを含む外因性の匂い物質の化学受容器として機能している。近年、嗅覚受容体が嗅上皮以外の組織に発現し機能している報告は散見されるが、そのほとんどについて機能は知られていない。 研究代表者は膵β細胞の機能解析について研究を進め、嗅覚受容体の一つであるOLFR15がマウス膵β細胞に発現し、中鎖脂肪酸であるオクタン酸をリガンドとして、グルコース応答性インスリン分泌(GSIS)を促進すること、この機序はPLC-IP3経路活性化であり、スルフォニル尿素やインクレチンなどの既存の糖尿病薬のシグナルとは別経路であることを解明した。さらに、膵β細胞には、OLFR15以外の複数種の嗅覚受容体が発現していることも見出した。これらのことから、研究代表者は「膵β細胞に異所性に発現する嗅覚受容体が、化学受容器として食事由来の成分などを関知し、個体レベルでの代謝調節に重要な役割を果たしている」という新たな概念を提唱した(Sci Rep. 2018)。 そこで本研究では、膵β細胞に異所性に発現する嗅覚受容体ファミリーの個体糖代謝における役割や病態への関与を解明することを目的として研究を進めている。具体的には、嗅覚受容体という化学受容器を用いて、膵β細胞が食事由来の種々の物質を認識し糖代謝を調節する仕組みや糖尿病病態における変容、インクレチンシグナルとの相互作用を明らかとし、化合物制御によるGSIS促進治療に向けた検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
嗅覚受容体を介したGSIS増強物質としてこれまで明らかにしてきたオクタン酸以外に有望な複数のターゲットを見出した。さらに、インクレチンシグナルとの相互作用についても有望な結果を得ている。この点は、当初の計画以上の進展であった。 嗅覚受容体のリガンド探索のためのアッセイ系については複数の細胞株を用いて検討を進めてきたが、系の確立には時間を要するものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた有望なターゲットについては、細胞・個体・糖尿病モデルを用いてさらに詳細な検討を進める予定である。 アッセイ系確立のための検討も同時に実施し、さらに有望なターゲットの探索も進めていきたい。また、膵β細胞嗅覚受容体システムが、個体糖代謝制御において生理的・病態生理的に果たす役割についても引き続き研究を進める。
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