研究課題
肥満及びメタボリックシンドロームの増加に伴い、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の有病率が上昇(6~37%)している。特に、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、肝臓関連死亡率の上昇を伴うNAFLDの病型の1つで、NAFLD患者の約30%に発症するが、NASHは現在承認されている直接的治療法がなく、病態メカニズムに基づく治療法開発が希求されている。そこで本研究では、ミトコンドリアでのヘム・鉄硫黄クラスター合成に作用するferredoxin reductase (FDXR)に着目し、その変容を肝臓特異的に引き起こすマウスモデルを利用して、肝臓インスリン抵抗性の新たな制御メカニズムにアプローチすることを目的とした。in vitro解析では、CRISPR/Cas9システムを用いてp53KO肝がん細胞株HepG2細胞を樹立し、FDXRのp53依存的発現誘導を確認した。また、FDXRが細胞内鉄センサーIRPを抑制し細胞内鉄量を負に調節しフリーラジカルを抑制する結果が得られた。蛍光免疫染色において、FDXRはミトコンドリア呼吸鎖の各複合体と共局在を認めた。加えて、ミトコンドリア超分子複合体解析でも、FDXRが複合体ⅠⅢⅣ、複合体ⅢⅣとの会合が観察され、FDXRのミトコンドリア機能制御が示唆された。in vivo 解析では、アデノウイルスをマウス尾静脈から投与し、肝臓で特異的にFDXRを過剰発現もしくはノックアウトを行ったグルコースクランプ試験の予備実験で、インスリン投与による肝糖産生の抑制率がFDXR過剰発現で大きく、FDXRノックアウトで小さくなる傾向を示し、FDXRによる肝インスリン抵抗性の改善が示唆された。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
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