研究課題
本研究では機能性副腎腫瘍におけるステロイドホルモン過剰産生および腫瘍発生・進展機構に関して、エピジェネティク制御に着目して明らかにする。さらにゲノム・エピゲノム解析と臨床情報、画像情報を統合して、新たな機能性・良悪性の診断法の確立につなげる。2021年度はKCNJ5やPRKACAといった機能性副腎腫瘍に高頻度に変異が見られる遺伝子をターゲットとして、次世代シーケンサーを用いて解析を実施した。次世代シーケンサーでの解析により、副腎腫瘍に関してこれまで報告歴のある17遺伝子を対象として解析を実施した。結果として、機能性副腎腫瘍80例と非機能性副腎腫瘍13例の解析を実施した。機能性副腎腫瘍の中で、原発性アルドステロン症おいて67%、クッシング症候群において77%、褐色細胞腫において45%の症例でターゲットとした遺伝子の一つに変異を認めた。この結果は、各々の腫瘍において約30-50%にまだ未知の遺伝子変異を有している可能性を示唆している。また報告例のある複数の遺伝子変異を認める症例はなく、また同時に解析した非機能性副腎腫瘍には解析遺伝子には変異を認めなかった。この解析の中で大変興味深いことに、これまでに報告がある遺伝子ではあるが変異部位がこれまでに未報告である症例やホルモン産生特異的な遺伝子変異とホルモン過剰産生が一致していない症例が見出された。これらは新たな知見であり、2022年度以降に報告を予定している。また、遺伝子変異とエピゲノム異常の関連に関して評価するために、すでに確立しているパイロシークエンス法を用いた手法で解析していく準備を進めている。今年度はさらに副腎腫瘍に関して、筆頭著者として国際誌へ2報の論文報告を行った。
3: やや遅れている
次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析の立ち上げに時間を要したが、2021年度に多くの症例の解析が実施できた。今後は、この結果を軸に、臨床的特徴とエピゲノム解析を実施していく。マイクロアレイ法を用いたDNAメチル化の解析手法も目途が立った。
2022年度上半期までに、2021年度に実施した次世代シーケンサーを用いた遺伝子解析を基に、症例ごとに臨床的特徴とエピゲノム解析の結果を集約し、その関連を評価する。2022年度下半期にAIを用いた新たな診断法の確立に着手する。
DNAメチル化解析に係る費用に関して、前年度までに測定系を確立できなかったために次年度使用額が生じた。今後、この費用を用いて測定系の確立に使用する予定である。
すべて 2021
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