研究課題
甲状腺ホルモン脱ヨード酵素には、1-3型(D1、D2、D3)があり、プロホルモンであるT4を活性型であるT3や不活性型であるreverseT3に代謝することにより甲状腺ホルモン作用の調節を行う重要な分子である。甲状腺機能低下症には半減期が長いT4製剤を単独で治療に用いるが、投与量を調節しても甲状腺ホルモン作用不足が残存するというアンメット・ニーズがある。本研究では甲状腺ホルモン脱ヨード酵素の視点からこの問題に取り組み、新たな疾患概念の確立と治療法の基盤構築を目指す。前年度までに、既に臨床応用されている化合物ライブラリーのスクリーニングを行った。プロモーターアッセイを応用して我々が新たに構築したアッセイ系に加え、プロモーター特異性・再現性の確認と、細胞毒性の除外も行い、最終的に正に制御するヒット化合物(D1:6個、D2:34個、D3:5個)と負に制御するヒット化合物(D1:7個、D2:なし、D3:2個)を確定した。これら化合物が生体へ有意な影響を及ぼすかを検証するため、当院の患者データを用いたコホート研究と統合させ、ヒット化合物の内服前後における甲状腺機能の変化を評価した。結果として、アドレナリン受容体作動薬であるリトドリン、PDE5阻害薬であるタダラフィル、チロシンキナーゼ阻害薬について有意な変化を検出することができた。リトドリン、チロシンキナーゼ阻害薬であるスニチニブについては、マウスへの投与実験において、それぞれD2、D3の有意な変化を確認することができ、論文投稿中である。さらにはD1、D2、D3をそれぞれ正に制御した際の甲状腺機能変化のパターンに関して確固としたエビデンスがこれまでなかったため、それぞれの過剰発現マウスを作成し解析した。結果として上記の臨床研究と同様の変化を確認でき、論文報告するに至った(FASEB J. 2022; 36: e22141.)。
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Clin Endocrinol (Oxf)
巻: 96 ページ: 236-245
FASEB J.
巻: 36 ページ: e22141