研究課題/領域番号 |
19K18007
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤田 有可里 大阪大学, 医学系研究科, 寄附講座助教 (60837003)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | β細胞量 / α細胞量 / Tリンパ球 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬投与後1型糖尿病を発症した膵組織の検討において、目標となる3症例の膵標本を入手した。 1症例目は膵癌腎転移に対し抗PD-1抗体(ニボルマブ)、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)併用療法を開始し、5か月で糖尿病ケトアシドーシスを発症した男性。65歳時に根治的治療のため膵全摘術を施行。2例目は54歳時に難治性ホジキンリンパ腫に対し抗PD-1抗体(ニボルマブ)を投与後3か月でHbA1c インスリン分泌の枯渇と血糖上昇を認めた男性。16か月後に現病悪化、肺炎とびまん性肺胞障害による呼吸不全で死去し剖検を施行。 膵組織の検討では2例ともβ細胞はほぼ認めず、α細胞量は1例目は0.49%、2例目は0.38%と多く残存していた。2例目においては膵島径が500μmを超えるような大きなグルカゴン膵島を認めた。CD3陽性細胞は、1例目では1膵島あたり1.1±0.2個(膵島計67±41個)、2例目では1膵島あたり0.93個(膵島計69個)であった。いずれも健常7例(自験例7例)のCD3陽性T細胞数{(1 膵島あたり 0.07±0.10個)(膵島計±個) }と比較して多く認めた。またCD68陽性細胞は1例目では膵島周囲・内部への浸潤は著明ではなく、2例目では1膵島あたり0.33個(膵島計68個)であり、健常例では1膵島あたり0.01±0.03個(膵島計±個) であった。 3症例目は尿路癌多発転移に対し、ペムブロリズマブ(抗PD-1抗体)2回目投与後に劇症1型糖尿病様の病態を発症し(膵島自己抗体陽性)、その1か月後に原疾患にて死亡した症例であるが、先日膵標本を入手したところでありこれから検討を開始する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3症例目の組織の入手に時間を要したが、先の2症例については予定通り検討が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
組織の評価を行っているが3症例とも発症機転が異なっており(自己抗体の有無など)、免疫チェックポイント阻害薬投与後に1型糖尿病を発症する原因は単一因子ではない可能性が高い。今後は炎症細胞数の評価並びに、残存β細胞におけるPD-L1の発現、T細胞におけるPD-1の発現を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は標本の採取並びに基本的な観察のみに終始したため、抗体等を含めた試薬の購入や有料機器の使用等は次年度以降に行う予定となった。
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