PD-1抗体治療後に1型糖尿病を発症した3症例(T1D群)、PD-1抗体治療を行うも1型糖尿病を発症しなかった3症例(non-T1D)、正常耐糖能(control)7症例の膵組織を用い、膵β細胞量、α細胞量、膵島炎、PD-L1の発現を比較検討した。 膵β細胞量の中央値はT1D群0.0002%、non-T1D群1.10%、control群1.04%とT1D群においてのみ極度に低下していた(p=0.040)。膵α細胞量はT1D群0.49%、non-T1D群0.17%、control群0.11%とT1D群で高値であった(p=0.042)。CD3陽性細胞は膵島周囲でT1D群1.1個/膵島、non-T1D群で0.6個/膵島、control群で0.03個/膵島とPD-1投与群で多かった(p=0.010)。CD68陽性細胞は膵島周囲でT1D群0.3個/膵島、non-T1D群0.1個/膵島、control群0.00個/膵島とやはりPD-1抗体投与群で多かった(p=0.011)。膵β細胞におけるPD-L1発現率はT1D群0%、non-T1D群10.5%、controlo群99.6%とPD-1抗体を投与された患者群で著明に低下した(p=0.007)。α細胞におけるPD-L1発現率もT1D群0.95%、non-T1D群11.5%、control群94%とPD-1抗体を投与された患者群で著明に低下した(p=0.007)。T1D群は3症例とも1型糖尿病疾患感受性のHLAを保有し、non-T1DではHLAを検査できた1症例においては1型糖尿病の疾患感受性のHLAと抵抗性のHLAをともに保有していた。 PD-1抗体を投与されると膵島におけるPD-L1の発現が低下し膵島周囲に炎症細胞が浸潤するが1型糖尿病を発症するか否かはHLAなどの遺伝要素が関与している可能性が示唆された。
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