研究課題/領域番号 |
19K18013
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
小川 顕史 北里大学, 医学部, 助教 (70458785)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 新規ペプチド / キニノーゲン / ブラジキニン |
研究実績の概要 |
申請者の所属研究室はヒト血漿ペプチドーム技術の開発に成功し、既存のあらゆるペプチドデータベースに記録のないキニノーゲン由来のペプチド2種類(以下、ペプチドA、ペプチドBとする)を発見した。ペプチドA、Bはヒト血液中から抽出されたものであるため、ヒト臍帯静脈細胞、線維芽細胞、大動脈内皮細胞、大動脈平滑筋細胞を新たに購入して実験を行ったがこれらの細胞に対する反応は確認できなかった。 ブラジキニンにはB1、B2の2つの受容体があり、ブラジキニンがB2受容体、des-Arg10カリジンがB1受容体に作用してお互いに炎症を増強しあうことが明らかになっているため、B2受容体の発現が豊富なヒト骨肉腫由来のMG-63細胞、B1受容体の発現が豊富なヒト胎児肺線維芽細胞(IMR-90)を用いて実験を再開した。 B2受容体アンタゴニストであるHOE-140で前処置を行ったのちにペプチドA、B、ブラジキニン、des-Arg10カリジンの4つをそれぞれMG-63細胞に添加すると、すべてのペプチドで細胞内カルシウム濃度上昇が完全に抑制された。また、IMR-90細胞に前述のHOE-140で前処置を行い、わずかに発現するB2受容体の完全に抑制した状態で4つのペプチドをそれぞれ添加すると、des-Arg10カリジンのみ有意な細胞内カルシウム反応を認めた。 また、ブラジキニンはGqを介してホスホリパーゼC(PLC)を活性化させ、ジアシルグリセロールの産生によってプロテインキナーゼCが活性化した結果、侵害受容器に起動電位を発生させることで痛みが生じる。PLC阻害薬であるU-73122を前処置してMG-63細胞に同様の実験を行った結果、4つのペプチドによるシグナル伝達は完全に抑制された。上記より、ペプチドA、ペプチドBはB2受容体に結合し、ブラジキニンと同様のシグナル伝達を行うことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これらの新規ペプチドが、研究代表者の専門領域である糖尿病や動脈硬化の分野に応用できることを期待して、血管関連のヒト初代培養を数種類購入した。しかしながら仮説に反してペプチドA、Bによる反応が全く生じなかったため、試薬濃度や反応時間など実験方法を模索していたところ時間を費やしてしまった。現在は、ヒト初代培養における反応は諦め、ブラジキニン受容体の豊富な培養細胞に変更して実験を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト初代培養と培養細胞で得られた結果に乖離が生じた原因を追求し、さらに炎症関連遺伝子に焦点をあて、ブラジキニンと新規ペプチドが引き起こす炎症関連遺伝子の発現量に差異が生じるか否かの実験を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ヒト血管内皮細胞を用いた実験を予定外に長く継続したため、あらかじめ予定していた実験をすべて行うことが出来なかったことが次年度使用額を生じさせた理由である。今後は炎症関連遺伝子を網羅する実験を行う予定であり、特に試薬購入に予算を使用する予定である。
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