研究課題
生体肝移植において過少グラフト症候群は予後を規定する重要な病態である。近年、ドナー肝摘出終了後に常温あるいは低温の体外機械灌流を行うことにより、心停止や脂肪肝ドナー等のマージナルドナーのグラフトコンディショニングに有効なことが臨床報告されており、ドナープール拡大の期待がされているが、生体肝移植(分割肝移植)分野への応用は進んでいない。本研究では、分割肝グラフト摘出後に酸素化体外灌流し、その際に肝再生の初期シグナルを薬剤性に賦活する方法を開発する。移植(再灌流)後早期に肝再生を完了させ過少グラフト症候群の克服を目指す。候補薬剤としてセロトニン類似物質(DOI)の効果を検討する。セロトニンは強力な肝再生刺激因子として近年注目されているが、副作用としてセロトニン症候群を引き起こす可能性があるため、人体への直接投与には適さない。しかし、体外機械灌流の条件下ではセロトニン症候群の危険が少ないため、肝再生刺激シグナルとして有効な治療法となる可能性がある。昨年度は単離肝灌流モデルを用いて、温阻血の脂肪肝グラフトに及ぼす影響を検討した。前年作成した脂肪肝モデルを用い、温阻血によりphosphatidylinositolのlysophosphatidylinositolへの変化が助長され、post-reperfusion injuryに関与している可能性を突き止めた。今年度は、昨年度に行う予定であった分割肝グラフトに対するDOI投与実験を再開する予定である
3: やや遅れている
分割肝グラフトモデルによる単離肝灌流・セロトニン類似物質(DOI)投与実験を再開、並びに心停止グラフトモデルでの低温機械灌流(HOPE)下でのDOI投与を行う予定であったが、人員の変更によりモデルの作成に難渋した。そのため、前年度まで行っていた単離感灌流モデルを用いて、脂肪肝グラフトの灌流実験を行った。今年度は分割肝グラフトモデル並びに心停止グラフトモデルによるDOI投与実験を継続して行う予定である。
昨年度は人員変更後、分割肝グラフトモデル並びに心停止グラフトモデルの作成に難渋したが、心停止グラフトモデルは施行可能な状況になりつつある。このため今年度は心停止グラフトモデルに対するDOI投与実験を行いつつ、分割肝グラフトモデルの作成に継続して取り組む予定である。
実験モデルの作成に難渋し、実験の停滞期間が生じた。並行して行った脂肪肝モデルによる実験では前年度購入備品で賄えるものもあり、次年度使用額が生じた。2024年度は心停止グラフトモデル、並びに分割肝モデルの作成を再開する予定であり、実験動物並びにDOIを含む試薬・機械灌流用の備品購入に使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)
Transplantation Proceedings
巻: 55 ページ: 1016~1020
10.1016/j.transproceed.2023.02.036
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Journal of Clinical Medicine
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10.3390/jcm12093163