研究課題
肝細胞移植は従来の肝臓移植と比べて簡便、低侵襲といった利点があるが、克服すべき課題も多い。その一つとして細胞ソースが不足していることがあげられる。その改善策として心停止肝グラフトに着目した。心停止肝グラフトは阻血再灌流障害をうけ、従来は臓器移植に使用できないと考えられていた。そのため破棄される心停止肝グラフトを細胞分離して利用することが可能かどうか検討した。我々は心停止肝グラフトの冷却保存後に短時間の酸素化バッファーの室温灌流を行うことで肝グラフトのviabilityが改善することを報告してきたが、心停止グラフトの機能は今までわかっていない。そこで心停止肝グラフトからの肝細胞分離の終了と機能の確認と、灌流による改善があるかどうかを検討した。まず心拍出下と心停止30分後のグラフトをそれぞれ肝細胞分離を行い、収量と機能の検査を行った。機能検査は細胞のエネルギー状態の把握に有用とされるADP/ATP検査を、また代謝機能の検査のためにアンモニア除去試験を行った。心停止肝細胞は収量が少なく、機能検査でも心停止グラフトと比較して低下することがわかった。次に心停止肝グラフトに30分間の灌流を行いその後に細胞分離を行った。収量が心停止より有意差をもって改善し、機能も改善することが明らかになった。ADP/ATPは先行論文によると、in vivoでの移植研究と相関関係があるとされているため、心停止肝グラフトに室温酸素化灌流することで肝細胞移植に利用可能と思われた。その報告を国際学会に発表し、さらにTransplantaion proceedingsに投稿、アクセプトされた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Transplantaion proceedings
巻: 000 ページ: 1-4
10.1016/j.transproceed.2023.03.051